未来の思い出

そうして着いた神社では、すでに多くの人が喧騒を奏でていた。


「人多すぎるだろ・・・絶対誰かはぐれるだろ」


「大丈夫よ。ほら!」


そう言って凛は、右手を差し出した。


「なっ!私だって!」


何故か環も、対抗するように左手を差し出した。


「「「・・・・・・」」」


周囲の目がとても辛い


俺は小さくため息をつきながら、2人の手を掴むと、そのまま2人で手を繋がせた。


「これで、はぐれないな」


元々、俺が心配していたのは2人の方だ。これでその問題は解決した。


「違うんだよ・・・」


「なんなのよこの男・・・」


そんな事を言いながら、俺たちは出店を回った。


「華やかでいいねー」


「ほんふぉふぉまふりっへいいへ!(ほんとお祭りっていいよね)」


「いつの間にそんなに買ったんだ・・・」


いつの間にか凛は両手にチョコバナナやフランクフルトを持っていた。


「んぐっ・・・ふう、2人も何か食べたりとかしないと勿体ないよ」


「それもそうだな。ならリンゴ飴でも食べようかな」


「あ、なら私はかき氷食べよ」


そう言って、環と俺はそれぞれ食べたい物を買ってくると再び合流した。


「所詮、リンゴを砂糖でコーティングしただけだな」


「そんなこと言わないの・・・」


そう言いながら環は自分のかき氷をつついていた。


「俺にも1口くれよ」


「え?まあいいけど」


環からかき氷を貰うと、1口貰った。


「所詮、氷にシロップと香料かけただけだな」


「何食べても同じこというのね・・・」


「ううう〜・・・」


凛はそんな俺たちの姿を見て、唸っていた。


「私のチョコバナナも食べて!」


「自分で買ったなら自分で食べればいいんじゃないのか?」


「鈍感が!私も間接キスしたいの!」


「ふぇ!?別に私は間接キスなんて・・・私そんなつもりじゃ」


「とにかく!ほら!」


「分かったよ」


差し出せれたチョコバナナを、俺は黙って口に運んだ。


「・・・美味しいよ」


「よかった!」


「私もの、もっと食べて!」


そう言いながら、環は俺の口元にかき氷を差し出した。


「もう結構です・・・」


周囲の目に苦しめられながらも、俺は丁重にお断りした。


「ねえ2人とも、そろそろ花火上がるみたいだよ」


「なら花火見れる所行こ!」


「だったらあの場所で見ようよ。よく見えると思うし、人も少ないと思うから」


「そうだな。あの場所行くのも何年ぶりなんだろうな」


「話についていけない・・」


「来れば分かるよ」


俺は神社の端にある山道を抜け、人気のない開けた場所に出た。


「わぁ・・・」


凛が息を飲んだ。


そこには、満天の星空と共に、眩き輝く花火が見えた。


「やっぱり綺麗だね・・・」


「本当だな」


俺たちは、しばらく黙って眺めていた。


「・・・・・・」


「・・?どうした俺の方なんか見て」


「その・・いつまでこうやって3人で遊べるのかな・・・と思って」


そんな事を言いながら、凛は少し小さくなった。


「そうだね・・・来年は私たちも社会人だから、こうやって遊べるのも少なくなるかもね・・」


自分で言いながらも、環まで小さくなっていった。


「そんなもの誰にだって分からない。だからこそ今の時間を大事にするんだよ」


「えっと・・・ありがと」


相変わらず妙なところでこいつは照れるな。


「まあ、ともかく花火も終わったし帰るか」


「そうだね」


「また来年、来れるといいね」


こうして俺たちの夏祭りは幕を閉じた。


「・・・というかあの言葉って君はこの時間を大事にしてるって事だよね!?」


「違う。言葉の綾だ」


「なんだよ可愛いなー!」


明日の朝ごはんは1人前ですね。






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