夏イベ

この物語は、作者が「暑いし、夏だし、なんか書こ」と安直な発想で書いた物語です。


※本編との関連性はございません。

少し昔の物語というイメージで読んでいただけると幸いです。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「夏だ!」


「海だ!」


「「夏休みだああああああ!!!」」


定休日の閑散とした喫茶店で、意気揚々と凛と環がはしゃぐのを、俺は興味なさそうに眺めた。


「何をボーッとしてるの!?夏なんだよ!?夏といえば!?」


「暑い」


凛の問いかけに対して、俺は即答した。


「違う!」


「熱中症もあるから外にも出たくないし。夏なんていい事ないだろ」


「熱中症はこまめに水分補給!私だって、おーえすわん家に常備してるよ!」


環が自慢げに言った。


「アレは熱中症になってから飲むものだ。それにアレだって一時的な対処にすぎない。熱中症かも、と思ったらそれは熱中症だ」


喉が乾く前に水分補給、少しでも体調が悪くなったら日陰に移動、誰かが熱中症で倒れたら首、脇、股間をペットボトルなどで冷やす!


「だから俺は基本的に外に出ないぞ。海だって嫌いだしな」


「熱中症が怖いのは分かったけど・・・私は君と遊びたいの・・・」


俺を上目遣いで凛が見てくる。


「わ、私だって・・・」


「それに今年は「平成最後の夏だからってか?」


言いたいことを言われたように、凛は小さくなった。


「でも凛とこうやって遊べるのも、いつまでか分かんないよ?私だって凛と・・・それから君と・・・」


後半の方はよく聞こえなかったが、やっぱり環も凛とは仲良くしたいようだ。


「それは安心しなよ環ちゃん。私たち結婚するからいつでも遊べるよ」


久しぶりに聞いたな、そのセリフ


「け、結婚なんてさせません!」


「?どうしてそんなに環ちゃんがムキになるの?」


「それは・・・」


「そんな事よりもだ。具体的に何をするんだ?」


「こんなに可愛い女の子が2人もいるんだよ?行きたい場所くらいあるでしょ?」


「どうせ海とか言い出すんだろうが、遠いから行かないぞ」


誰が好き好んで塩の混じった液体に身体を入れるか


「あ、だったら夏祭りとかは?ちょうど今日だし」


環が思い出したように言い出した。


「あー、神社でやってるやつか。まあ近いし、夜だからそれくらいなら」


「なら一緒に行こっか。凛ちゃんもいいよね?」


「別にいいけど、私浴衣持ってないんだよね・・・」


やっぱり女子はそういうのが気になるのか


「多分、近所でレンタルしてたと思うから大丈夫だよ」


「だったら行ってみようかな」


「そうと決まれば5時にまた集合ね」


こうして俺はしばらくの間、2人が着替えてくるのを待った。


「お待たせー」


そんな環の声が聞こえ、俺は振り返った。


「どうかな?」


そう言った環の浴衣は水色の映える、雰囲気にあった浴衣だった。


「ごめんね。意外と選ぶので迷っちゃって」


そう言って現れた凛の浴衣は、黄色を基調とした、淡い色の浴衣だった。


「よし、ならさっさと行くか」


すると何故か二人して不機嫌な顔になった。


「私たちに何か言うことあるんじゃないの?」


「言っている意味が分からないな」


「なんでこんなに鈍感な男好きになっちゃったんだろ・・・」


「環何か言ったか?」


「何でもないわよ!女の子が浴衣着て、言われたいことなんて一つでしょ!」


「あー・・・」


要するに「似合っている」と言えばいいのだろう。


「二人とも似合ってるよ」


「心こもってないように聞こえる」


「充分過ぎるくらい似合ってるから」


そう言ったのは、俺の本心だった。


凛は、その優れた容姿が黄色と相まって輝いて見えるし、環だって青っぽい浴衣は彼女のスタイルの良さをさらに強調している。


「まあいいけど。それに早くしないとお祭り始まっちゃうよ!ほら環ちゃんもモジモジしてないで!」


「え、ちょ!?」


凛に引っ張られていく環を見ながら、俺も後を追った。

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