最重要回(ただし読み飛ばし可)

早速だが、俺はプールに来ていた。


特別泳ぎが得意でも好きでもなく、なおかつ人が密集した場所が嫌いな俺が、もちろん1人で来るわけがなく。


「お待たせー!」


「更衣室混んでて遅れちゃった」


「いやぁーごめんね」


そう言って現れたのは、他よりも圧倒的に目を引く3人だった。


「どう?私たちの水着?」


そう言った凛の水着は白いシンプルな水着にパレオを巻いた大人っぽい雰囲気の水着だった。


「ど、どうかな・・・」


環も、恥ずかしがりながらも、俺に問いかけてきた。


そんな環の水着は着物と同じような水色の綺麗な水着だった。


「いやいや、私の水着が一番だよね?」


今日は千咲さんも一緒に来ている。


そんな千咲さんの水着はピンク色のフリルの付いた子供用にも見える水着だ。


3人とも性格が出るんだな・・・


「まあ聞いたところでこの人は似合ってるよーしか言わないんだろうけどね」


「そんなに心がこもってない事は言わない。せいぜい性格出んだな、くらいは言うぞ」


「それ変わんないから、むしろ私たちはそれを求めてないから」


「だったら凛は何を求めてたんだ?」


「可愛いって言ってもらえることよ!」


どうやら少し気を悪くしてしまったようだ。


まあ後でアイスでも買えば機嫌直るけどな。


そんな事を考えながら、俺はここに至るまでに経緯を振り返った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「さて夏祭り行ったし、次はどこ行く?」


今日も凛と環は、夏休みの計画で忙しそうだ。


「こんなに暑いのに出かける必要はないだろ。どうして暑い思いしてまで出かけたいんだ」


俺のその発言を、凛は見逃さなかった。


「今暑い思いしてまで・・・って言ったよね?」


「あ、ああ。言ったけど・・・」


「だったら行く場所は決まったようなものだね!」


凛が環に目配せすると、どうやら環もなにかに気づいたようだ。


「なるほど!いい考えだよ!」


「暑いから外出たくないんだったらさ・・・」


「「プール行こ!」」


「あー・・・そういう事ね。でもお前たちは一つ勘違いをしているよ」


ヤの付く職業の偉い人のような態度と言葉で俺は言った。


「な!?私の考えには一切問題はないはず・・・」


「・・・!まさか!」


どうやら環が答えにたどり着いたようなので、ここでネタばらしすることにした。


「簡単だよ・・・この近くにはプールがない」


「なにいいいいいいいい!?!?」


どうやら凛はそこまで考えが至っていなかったようで、かなり慌てている。


「さてこれで俺たちの夏休みは決まった・・・家でのんびりして夏休みを終わらせることだ!」


「いやだあああああああああ!!!」


これからの灰色の夏休みを想像したのか、凛は軽く涙目になっている。


「盲点だった・・・くそっ・・・」


環までもが、悔しそうにテーブルを叩くふりをしている(実際に叩くと母親に怒られるらしい)


「これで夏休みのけいK「待な、誰かを忘れていないかい?」


「「そ、その声は!」」


声の聞こえた方向を振り向くと、見るからに「無理してコーヒー飲んでる中学生」を象徴するような人こと千咲さんがそこにはいた。


「今、君失礼な事考えたでしょ?」


「特には考えてないです」


エスパーかこの人は


下手にバレたらどんな仕返しをされるか分かったもんじゃないと思い、ここは嘘で通した。


「まあ深くは追求しないよ。それよりも君たち面白そうな話をしてるね。私にも聞かせてもらえないかな?」


「実はプールに行きたいと思ったんですけど、近くにはプールがなくて困ってたんです」


「なるほどね。だったら私が車を出そう」


「本当ですか!?でも免許証って・・・」


「安心しろ。持ってるし、それに自分の自動車だってあるからな」


千咲さんの家も、そこそこの家だから車を持っていることはおかしくはないが、ただ千咲の身長でも操作出来る車というのが気になって仕方ない。


「気持ち調整しただけぞ。それに私がいくら幼く見えても平均身長よりも10センチほどしか低くないからな」


だからエスパーかよ。それと10センチは低いですから。


「だったら今週末は塾もお休みだし、私の運転で行きますか!」


こうして決まったプールに、各自は楽しそうに話している。


・・・電車使えばいいだけだったんだけどな


まあ人数が多い方が楽しいだろうと自分を納得させた。

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