第九話 やりたいようにやってしまえ!

「はい、はい……ではお願いします」

「……相手はなんと?」

宮崎は恐る恐る電話をかけていた桃花に尋ねた。

すると、桃花はどうということはないという顔をして言った。

「今後このようなことがないようにお願いします……とのことです」

「はい…」

「もう二度とあんなことするなよ?」

「はい……反省してます」

なぜここまで宮崎が反省しているのかというと、例の作画担当事件に遡る。

「遡るって言っても何行か前ですよね?」

「うるせぇ、あんま言ってっと記憶の彼方にポイするぞ」

「私に対してだけひどい!謝ったりとかいろいろ大変なことした上になぜか必要のない始末書書かされた上に、あんなことやこんなことさせられたのに!!」

そう、あれは例の作画担当事件にまで遡る。

「無視!!!」




「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「落ち着け!宮崎!!」

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオス!!!」

怒りのあまりイビルジョーみたいな動き、ポケモンのゲーム時ボイスみたいな声になってしまった宮崎は歩く災害と化していた。

その足は、全ての生命を踏みにじり、その息はすべての生物の呼吸を困難にする……あれ?なんかただ単に足音うるさくて息が臭い生き物っぽいな。

「わたしはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ただぁぁぁぁぁ!みんなのことを思ってたのおおおおお!」

「わかった!お前の言いたいことは分かったから!」

「誰がやってもねぇぇぇぇ!おんなじやおもてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「元ネタはちゃんとわかった!言ってることクソだけど!!」

どこぞの泣き喚き議員の真似だということは分かった。

それ以外は理解する気すら起きない。

「んああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「やめろ!暴れまわるな!!」

「私はもう人間をやめるぞ!!蓮太!!」

「怒りにまかせて人間をやめるな!ジョジョファンに殺されるぞ!」

「もう死んでもいい……私はもう思い残すことはない………」

「情緒不安定か!!大丈夫かお前!!」




「とまぁ、そのあともそんな感じで物事が進んだんだよな………」

「どこに向かってしゃべってるの?そっちに誰かいるの?」

「いや……行数稼ぎと思われないように一応な?」

「ふーん、それより、あんた小岩井が運んだ機材どこにあるか知ってる?」

「え?視聴覚室にないか?」

俺が宮崎に呼ばれる前、先輩をきちんと視聴覚室に送り届けて、それから宮崎の元へと向かったので、迷った先輩が違う部屋に置いたってことはないはずだが……。

「それがないのよ、みんなが来る前に少しだけ作業しようかなと思って視聴覚室に言ったんだけど……」

「なかったと……」

「えぇ、代わりにヤムチャが転がってたわ」

「ヤムチャしやがって……」

冗談はさておき、本当にないのなら問題は深刻だ。

ちゃんと置いたところを俺もきちんと確認しているので、メンバーのうち誰かが移動させたか、誰かが盗んだということになる。

移動させたということなら、俺達に連絡が行き届いていないというのはおかしな話なので、消去法で後者ということになる。

だとしたら誰が……そんなことを考えていると。

「あれ?そういえばみんなは?」

「え?………いないわね?」

「桃花はいますよ?」

「はぁ……探しに行くか」

「仕方ないわね」

「もうそろそろ泣きますよ?」

いや気づいてはいるんだよ?ただ反応してやるのがめんどくさいだけで。

まぁ、このままだと拗ねてしまいそうなので、俺は桃花の手を引いてみんなを探しに向かう。

「ふえ?」

「いくぞ」

「は、はい………」

拗ねる事は回避出来たようで、桃花は俯き、顔を赤くしている。

それを見て宮崎が機嫌の悪そうな顔をしたが、関わるとめんどくさそうなので俺は無視することにした。

「さてと、まずはみんなと合流しないとな」

「あ、多分皆なら食堂にいると思いますよ?翠先輩が学食に言ってくると言っていたので」

「……そういえば、小岩井先輩は部のメンバーじゃないんだったっけ……」

完全に忘れていた。

メンバーとばかり思っていたので、普通にこき使って機材運ばせてたよ。

「どうしました?先輩」

「え?あ、いや?なんでもないんだよ」

「そうですか?じゃあもう向かいますか?」

「ここではいを選べば、自動的に目的地に着いたりしない?」

「ストーリー重視の現代ネトゲじゃないんですからそんな機能はありません」

「ちょっと!どうでもいい話で私のことを無視するのはやめなさい!」

桃花と完全に位置交代を果たした宮崎は、怒りと悲しみの感情をこめて叫んだ。

もしかすると、桃花は幻のシックスマンとか言われるような存在なのかもしれない。

そしてもしかすると、ミスディレクション・オーバーフローなるものを習得していたりするのかも知れない……そのせいで、宮崎が……いや、ないな。

「はぁ、さっさと行くぞ?」

「はいです!」

「仕方ないわね、ついて行ってあげるわよ」

「お前……そろそろこの物語の終わりだっていうのに、後付けでツンデレ要素出してくんなよ」

「うっさいわね!いいでしょ別に!いいから行った行った!」

グイグイと宮崎に押され、俺達は食堂へ向かうこととなった。


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