第八話 色々な人に怒られることを覚悟して書いてるからホント小説家ってのは命懸けだぜ。

『やはり俺のご注文はエロマンガ諸島』


血生臭い鉄と何かが腐った匂い……そんな色々な匂いが混ざりあう空間で一人倉科(くらしな)蓮(れん)兎(と)は血に彩られぽつんといた。

手には自分の胴程もある西洋の作りのクリスタルのように透き通ったバラの装飾のはいった剣を握りしめている。


『ここは異世界神姫オンライン……神々の与えし試練に挑むものを試す世界……』


何処からともなく鳴り響いたアナウンス、それは冷淡に蓮兎の耳に残った。

「……神々の試練……?」

『この世界は多種多様な神の仕切る世界であり、ここでは人それぞれに適した試練を受けてもらい最終的目的として近いレベルにいる男女がペアとなり、一姫の神を討っていただきます』

「…………るな……」

『そしてこの世界では……』

「ふざけるなっ!!」

蓮兎はこの世界に何がきっかけかはわからないが、転生させられた少年少女のうちの一人で、今はアナウンスにあった神々の試練に挑んでいるところであった。

「なにが試練だ!!俺達に人殺しをさせただけじゃないか!……こんなの……誰が望んでるって言うんだよ!」

『何度も申し上げている通り、神です。神がこの世界のすべてを決めております』

「なんだよ……なんで俺達なんだ!なんで俺達がこんな……」

『世界に飽きた方、必要とされなくなった方々を中心に人選させていただいているので、なんで……という質問に対してはこう答えるしか……』

「つまり……俺達はみんな誰からも必要とされなくなった人達か元いた世界に愛想を尽かした人達ってことか……だとしてもだ、なんでこんな殺し合いをしなくちゃいけないんだ!」

『それにつきましては、今お答えすることは出来ません』

そう答えたアナウンスの主は姿こそ見えないが、少しうつむいているように思えた。

すると少ししてから周りの城壁のうちひとつがごろごろと音を立てて崩れていき、隠し扉のようなものが現れた。

見つめてみるも奥は暗く、全くもって予測することができない。

「隠し扉……?」

『お進み下さい、この先にて貴方様の最終試練が執り行われます』

「最終……試練……」

その響きは先ほどの悪夢……五十人以上の人が殺された惨劇…現れた紅の角を持つ狼のような魔物が人を食い散らかす様を思い起こすことができた。

「次で最後なのか?」

『えぇ、貴方様個人の試練は最後となります』

「個人の……か」

『質問はもうよろしいですか?』

「あぁ……もういい……」

世界で今この場にいるのは自分独りだと知った蓮兎は床に放っておいた自身の獲物を手に取ると屍を踏み分けて扉の奥へと向かった。

(暗いな……視界はゼロで、なんの匂いもなし……周りの状況を把握することができる物が何もないな……)

そんな暗闇の中、心細いはずの蓮兎が進めている理由は一つだけだった。

「瑞(みず)希(き)……お兄ちゃんに力を貸してくれ……」

そう、蓮兎の妹である。

親が離婚してから母方の祖母の家に預けられた最後の家族で蓮兎の心の支えである、そんな妹を心に抱いているかぎりはその足を止めることはないだろう。

「最終試練にしてはモンスターのようなものはないな……」

『では、最終試練の開始です』

「は、いや、いきなりっー」

いきなり宣言された試練開始の合図はスンと出て蓮兎はとっさの判断が出来なかった。

それに対しツッコミをいれる蓮兎の事などお構いなしに神々の試練というやつは蓮兎に次なる試練用魔物を召喚した。

《獣兵士ディアブロス》とネームのウィンドウが出たそのモンスターは蓮兎を睨みつけると雄叫びを上げて蓮兎へ向けて突進してきた……。

「な、なんだ!?」

『獣兵士ディアブロス……神ヘクトに仕えし一の使者です』

「一の使者……つまり、強いのか?」

『えぇ、それはもう、戦車で討伐に向かった軍隊が灰塵とかしたと言われています』

「それ……勝ち目ないんじゃあ……」

戦車を例えに出されたせいで怯んでしまった蓮兎は目の前にまで迫っているモンスターの攻撃を避けることができず、腹部にクリーンヒットし吐血吹き飛ばされてしまう。

「がはっ!………な、なんなんだ……!」

『ディアブロスのスキル《デスサイズ・トレイン》です、一撃で今の貴方様でしたら体力の半分を削り取られます』

「半分て……!?後一撃くらえば俺は死ぬのか?!」

『まともにくらえば後一撃、掠る程度でしたら何割かましになります』

「どちらにしろもう受けてやるわけにはいかないな」

『でしたら一つだけ伝授いたします』

「なにをだ」

『ディアブロスを撃破するために必要な必殺技です』

「なに!?そんなものあるのか!」

この勿体ぶりようにいちいち突っ込んでいてはもたないので、蓮兎は伝授を受け、この危機を打破することにした。

「で、なにをどうすればいい、一瞬で頭に叩き込む」

『では、言う通りになさってください、まず、システムウィンドウを開きます』

蓮兎はコクっと頷くと、右手で空を縦に切るような行為にてアイテムやステータスの閲覧するためのバーがあるシステムウィンドウを開いた。

『では、まず装備と書かれているバーがあると思いますが、それをタッチしていただいてもいいですか?』

「……よし、できたぞ」

『では次はその中にある《ビギニング・ソード》と書かれた武器を装備してください』

蓮兎は装備一覧の中にある《ビギニング・ソード》と書かれた武器をスライドして藍色の人型の立体化したオブジェクトの右腕に持たせた、すると瞬時に蓮兎の右腕に顕現した。

「これは……?」

『いわゆる、このゲームの初期装備というやつです、持ち主のステータスに応じて進化し続ける……いわば、共に歩んでいける相棒です』

「相棒……」

何ともこそばゆい響きに蓮兎は一時状況を忘れてにやける。

その後敵をもう一度認識してアナウンスの声の主へ問う。

「これであいつを倒せるのか…?」

『不可能ではなくなりました』

「そうか……それで十分だ!!」

蓮兎は左手に握っていたバラの剣を床に放ると新たな獲物を握りしめてモンスターへと向かっていった。



第一章「神々の世界」


 とある晴れた日の事、草原の上に蓮兎は寝っ転がっていた。

「すぅーすぅー……」

呆けた面で寝そべる蓮兎は通行人の人々からは良いようには見られない、むしろ、こんなに人が本当に死ぬゲームのように造られた異世界……《神姫オンライン》で皆が協力し、脱出を目指しているなかでこのように協調性がない者は嫌われるのだ。

「ん……あ?ふぁーあ、どれくらい寝ていたんだ?」

「ちょっと、そこのあなた!なんでこんなところで油を売っているの!」

「へ?油……?」

「あなた神々の黄昏のメンバーよね?確か、メンバー各位に素材集めの指令が下っていたはずよ?」

「あぁ……ちょっと、一段落ついたから休憩してただけだよ。サボってたわけじゃない」

「へぇ!早いのね?ちょっと見せてみて?」

彼女の名前は梓、神討ちギルド《神々の黄昏》の親玉的存在のギルド《デスマーチ・クインテット》と呼ばれる五人組のリーダーを張っている。

今は神姫と呼ばれる歳ばらばらの女性の見た目を神との戦いが迫っているため、武器の強化のために強化素材の収集を義務付けられていたのだ。

「一、 ニ、三……うん、ちゃんと集まってるね」

「だからいったろ?あんたが気にかけなきゃいけないことなんてない」

「むぅ、少し心配だったから聞いただけじゃない」

「もういいか?まだ少し眠いんだ」

「……ねぇ、少しダンジョンに付き合ってくれない?」

「いや、話を聞いてくれよ……」

その後、いろいろと理由をつけて断ろうとしたが、蓮兎の目論見は梓の完全なるスルーの前では意味を成さなかった。

渋々昼飯を奢ってもらえるということでダンジョンへと向かうことにした。

「なぁ、飯ってさ、どこかで食うの?」

「んー……私が料理出来ればいいんだけど……ねぇ?あなた料理出来たりしない?」

「簡単なのなら、それとそのあんたってのやめろ、俺は蓮兎だ」

「分かったよ!じゃあ……蓮兎…いや蓮兎君?蓮兎君!これからはそう呼ばせてもらうね!」

「ん、まぁ呼び方は好きにしてくれ……俺は、そうだな……梓って呼ばせてもらうよ」

「よ、呼び捨てなのね……」

「いやならやめるぞ?」

「い、いや!そうじゃないの!!ただ、男の人にそんな呼び方されたこと無かったから……」

頬を薄紅色に染めて照れくさそうにする梓は突き出している手と逆の手で頬をぽりぽりと掻く。

すると、梓は「閃いた!」と言ってメニューウィンドウを開き、紙と水晶のようなアイテムを取り出し蓮兎の目の前で起動させた。

その水晶はどこかの施設のフロアの全体図を立体的に空中に映し出すものだった。

「これ、スキャニング・スフィアか?」

「そう、うちの副団長さんが入手した物なの」

「ふーん、ここに一緒に行きたいのか?」

「うん、実はうちの団員も何回か行ってみたらしいんだけどね……無理だったみたい」

「へぇ……」

梓の所属するギルド《デスマーチ・クインテット》は神姫オンラインの中でも屈指の実力者揃いで有名だ。

この間もフィールドまるまる一つ制圧して階層主をブンブンと投げまわしたらしい(これは物の例えです)。

そんなギルドのメンバーがクリアできなかったフィールドを蓮兎がペアを組むだけでクリアできるはずもないのだが……。

「何が目的だよ」

「え?」

「俺がいてもお前にメリットなんてないだろ?それでもこんなにしつこく誘うんだ……なにか目的があるんじゃないか?」

「……あはは、私信用ないね……ただ誘いたいだけって言っても信じてくれないの?」

「……まぁ、いいけど」

「よかった……私ね?蓮兎くんとは前々から一緒に冒険をしてみたかったんだぁ」

「え?お前俺の事さっき知らない口調だったろ?」

「え…あ、いや、それはその……」

もじもじとして口をごもごもさせる梓、何か言いたくない理由でもあるのだろうと自身で勝手に解釈した蓮兎は梓に手を差し伸べた。

「まぁ、言いたくないことの一つや二つあるよな、」

「ん……うん」

「ま、さっさと飯食っていこうぜ?腹減った」

「あっ!ちょっとまってぇ!!」




「ずずずりゅ、ずぼぼぼぼぼぼぼぼ」

「食ってから喋ってくれ……何言ってんのかマジでわからん」

「ずぼぼ?っごくん!んとね、陣形どうしようかって」

陣形……それはソロで活動する蓮兎には全くもって意味のないものだ。

適当にあーだこうだと適当な作戦を述べる蓮兎に梓は。

「そんな作戦で本当にいいと思ってるの?はっきり言って穴だらけだよ?」

「え?そうなの?(分かったうえで言ってんだけどさ)」

「そんな感じでよく今まで生きてこれたよね……はぁ」

この世界にザコという概念はない。

モンスターに限った話ではあるのだが、一体一体がそこらのRPGのエリアボス並みに強く、倒す方法も限られているため、でたらめにぶつかるのでは決して倒せないようになっている。

陣形というのもサッカーなどで使うようなものではなく、その陣形によって様々な効果を発揮するのだ。

この世界における神の加護というものらしく、陣形における効果は絶大だ。

だからこそ、梓は陣形を組まない蓮兎がここまで生きてこられた事が不思議でならないのだ。

「そんな事は言っても生きてたからな……ま、運がよかったんじゃないかな?」

「ほんと……でも!今日からは私とパーティを組んでもらうからね?」

「いやいいよ、俺はのんびりとやっていくよ」

「そんな様子だと安全マージンとか全然とってないんでしょ?」

「ここでもその言葉が意味を成すのかって言われるとそうじゃないだろ?安全をとっているからと言って、安心しすぎるのもどうかと思うぞ」

この世界には、モンスターの弱点などは存在しても、明確に対象レベルというものが存在しない。

他の……普通のゲームであれば攻略サイト等を見れば討伐対象のレベルなどがあるだろう、しかし、このゲーム……神姫オンラインでは、もちろん攻略サイト等というものはないし、何より検索なんて言う事をこの世界が許してくれないのだ。

「それでも四六時中気を張っているような生活だと疲れちゃうでしょ?安心する事も必要だと思うの」

「あんたこないだの集会でも同じこと言ってたろ」

「ぐぬ……い、いいじゃない!難しいことばっかり言ってるあのおじさんよりいいでしょ!」

「まぁ、あんたみたいなやつの方がサボりやす………楽だしな?」

「言い換える気全然見られないね!?」

蓮兎はどこまでもマイペースでどこかつかめないようなキャラをしているため、なかなかに砕けたような地位的な差を気にしない会話をしたりするのだ。

「私だからいいけど、他のところの団長さんにそんな態度だと怒られちゃうんだからね?」

「あーはいはい分かったよ」

「ほんと分かってるのかな……」

「で、そろそろ行くの?行かないの?」

「そうね……あとこれとこれを食べたら行きましょうか!」

「まだ食うのかよ………」




           ×××




「さて……装備は十分かーーー!」

「大丈夫だ、問題ない……とか言っとけばいいのか?」

「いいね!そう言ってくれるの期待してたよ!」

よく言うお約束というものらしい。

テンションがかなり上がった状態の梓は、蓮兎が腰のベルトに剣を通しているのを見てタイミングを計ったかのように蓮兎に先ほどのセリフを要求したのだ。

「さて、今回の迷宮なんだけどね?モンスターはボア系統が出る事くらいしか分かってないの、もし何かあったら………」

「あんたを見捨てて逃げろってか?」

「そうそう!絶対だよ?」

「……ま、その時次第だな」

「ん、結構割り切ってて安心したよ」

この世界はゲームいということになってはいるのだが死んだ人間がどうなるのかは誰も分かっていない。

死んだら元の世界に転送されるのではないか?という人がいる。

死んだら現実での死が待っているという人がいる。

現実では自分の本体があって、何かの実験に巻き込まれて、意識が分離しているだけだと言う人がいる。

つまり、意見は三者三様ということだ。

そのためこの世界では、他人を庇ったりなんて事をする者はいない。

「よーし!さっそく向かおっか!」

「おう、ならあれだお前も絶対に俺を助けたりなんてすんなよ?」

「それは……うん、分かってるよ」

「よし、なら向かうか」

この時二人は思っていた。

この約束は死んでも守らない……と。



「中は結構涼しいんだね!」

「外と中の温度が若干違うな……ここら辺は特殊なのか?」

この世界は天候の変化は全て神々の創造主とされるカーディナルシステムによって決められている。

街中は晴れ、雨、曇り、雪、嵐をランダムで周り、他のフィールドではあらかじめ決められている天気を延々と続ける。

その変化は気温にももちろん影響を与えるのだ、晴れれば暖かくなり、雨が降れば湿っぽくなる………そんな当たり前な事だ。

「けどココまでとはな?さて、迷宮内が悪い意味で変化してなきゃいいが……」

「それはどうとも言えないわね、うちの団員の話だと行った時には暖かかったみたいだし」

「迷宮内が変化している……?」

「迷宮攻略をメインにしたゲームとかそんな感じの奴あったわよね?あれとおんなじ感じかしら?」

「だとしたら最低限の危険は回避できるな」

迷宮をクリアする事を目的に置いたゲームではどのゲームであってもある程度の規則性というものが存在する。

踏めば何らかの悪手に誘われるトラップ床であったり、入り込んだら最後のモンスターが大量に押し寄せてくるモンスターハウスだったり……とまぁ、そんな風に語る事が出来るくらいには規則性があるのだ。

「俺が先に行く、後ろをついてきてくれ」

「でもそれは……」

「少しだけ俺も知りたい事が出来たんだ、別にあんたの為じゃない」

「むぅ……もう少し位私に脈がありそうな態度とってくれたっていいのにぃ」

「いや、迷宮内で色恋沙汰起こす気にはなれないからな」

「外ならいいの」

「はぁ……外でも同じだ」

蓮兎は言う。

「こんな世界で色恋に現を抜かしている暇なんてないだろ」

「こんな世界だからこそだよ!楽しむことも大事なんだよ?」

「……ほらいい加減行くぞ」

蓮兎は決して恋に臆病だとか、過去にトラウマなどがあってこんなにツンケンしているわけではない。

ただ他に理由があるのだが、今はそれを語る時ではない。

「……妙に静かだな?」

「切り替え早いなあ……たしかにね?」

「普通モンスターの一匹でもいればいいものを……」

「モンスターがいない迷宮なんじゃない?」

「そんなものあるか?」

「ないとは言い切れないじゃない」

「でもそれだと……」

梓のギルドのメンバーが攻略出来なかった理由は他にあるのか……モンスターのレベルが自分に合っていなかったという理由以外で何がそこまで攻略不可能と判断したのか……そこを蓮兎は気にかけていた。

「悩んでいても進む足を止めるだけか」

「そうだね、気を引き締めて行こうか!」

「あぁ……もう階段が見えてきたな」

「早いね?」

「いや、早すぎる……なにかおかしい」

正体の見えないなにかに悩みながら蓮兎達は階段を一段一段用心深く昇って行った。


「この階もか……」

「さすがにこうも続いてると不安になっちゃうよね……」

「他人事だけどあんたも不安がる場面だからな?」

「そうなんだけど……ほら私がこの雰囲気変えてやろう!って思って……」

「余計な気遣いだ」

「もう!いつまでもツンケンしないの!………ねぇ、今の」

「あぁ」

二人の意識は、会話ではなく、後ろを猛スピードで駆け抜けていった『なにか』に向けられた。

「こいつはもしかしなくてもやばいかもしれないな」





「ちょっと待って?」

「なに?」

混乱するといけないからここからは普段の会話に戻るということを言っておこう。

「何このどこかで見たことあるような話は……」

同じページ内で見た気がするぞ!?いや、気のせいか……。

「いやね?SAО見てたら急にバーチャルリアリティの限界に挑んだ作品が書きたくなってね?これはその結果よ」

「なんだこいつは、才能の塊かよ」

「照れるわ」

実際に褒めてるから言い返せなくてイライラする。

一話のほうでも紹介したが、こいつは天才なのだ。

書きたくなった、したくなったと言ってはじめたラノベ作家という道も、ものの一か月後にはそうなってたし……。

先にデビューしてた俺が「十万部も売れたぞ!どーだ!」って言ったら、「あんなにシリーズ出してるのにそれ?私なんて累計で一千万部突破したんだけど?」「…………」。

あ、勘違いはしないでほしい、こいつに悪気なんて一ミクロ程も存在しないのだ。

「こういうの新シリーズとかで出さなくてもいいのか?」

「いいのいいの、どうせ続き考えるのがめんどくさいから、一話完結型のオリジナルアニメーションにするって決めたの」

「ああ、そういう理由……」

こいつが言うからにはそうなのだろう。

こいつはこういうところで嘘をつかない奴だということは俺がよく知っていた。

「そそ、だからあんたが気にする必要なんてこの世に塵一つ存在しないのよ」

「へいへい」

「それにしても、この量だけだと全然足りないわよね?」

「んー……まぁな?」

「ならさ、あんたがここのプロデューサーになってよ」

「誘い方の意図が見えん、魔法少女生み出していったきゅうべえですらもっとうまく契約するぞ」

するとこいつはそれについては今から私が説明するわと、こう続けた。

「この企画を作ったのは私よ、それは間違いないわ」

「お、おう?」

誰も疑ってねえし。

「当然企画立案者の私がプロデューサーをしないというのは責任問題から逃れようとしているように見えても仕方ないわ!」

「誰も言ってね「でもね!」」

俺の言葉にかぶせて言ってきやがったもんだから、誤字ったみたいに見えちまったじゃねえか。

「私シナリオとかほかのやつも作画以外は大体一人でこなしてるわけよ、ぶっちゃけ時間無いの」

「お、おう」

「責任とか難しいことは考えなくていいから、とりあえずスケジュールの管理あたりを任せてみようと思ってるの」

「それ本人に言うことか?普通ほかの人に話して、決まってから俺に話を持ってくるもんじゃないの?」

「いや、もう決まって入るのよ?ほかの人にももちろん話したし」

「決まってんのかよ」

それ、俺が嫌だっつったところで変わることはないってことじゃないですか?

「まぁ、その……ね?」

「ん?」

「頑張ってみてほしいなぁ……なんて?」

「いいけど、ん?てか待てよ!?」

「なによ」

「このアニメさ……作画誰が担当するんだ?」

「んとね、一応まだ頼んでる最中なんだけどね?」

「……ちなみに誰?」

「ねこめたる先生」

この後めちゃくちゃ宮崎は怒られて、その挙句に頼んでる人がねこめたるって名前を使ってるだけのただのツイッターユーザーだということがわかり、怒りの矛先を俺たちに向けた宮崎はこの間オクヤフで買ったエリュシデータで切りかかってきた。


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