長官

「失礼いたします」

 ドアがノックされ、秘書が入ってきた。


「どうした。」

「ええ、どうしたもこうしたもあの竹下に正式に捜査権が戻ったとのことで、ご報告に上がりました……」

「ふむ………」

 警察庁長官片野等は秘書の報告を受け、苦悩した。


「またあいつも悩ましてくれるの……」

 くるりと体を回し窓越しの空を見上げた。


「いつも思うのですが、空。お好きなのですか?」

 秘書がさりげなく尋ねた。

「………このよくわからない世界、でもいつでもそこにあるのだからな……」

 そうですね、と答えた。


「全く岩瀬のあの野郎、手をかけさせやがって。」

 ぽきりと手がなった。

「如何しますか?」


「竹下。あいつはかなり、やばい。」

 "やばい"に力が入る。


「やばい……と、言いますと?」

 彼は普段このような言葉使いはしない。


「このまま嗅ぎ回らせてみろ。

 今にも、まずいことになるぞ………」

「はあ、」


「竹下、中沢、あいつらは捜査2課に落とせ。

 そして二週間の謹慎。

 これでいいだろう。」


「それが……今回これを嗅ぎ回っているのが奴らのみならず………」

「誰だ?」

「この間参事官に昇格した馬場もやっているそうです。」

 まじか………と彼は呟いた。


「まあ、奴らがいなくなれば馬場もやめるであろう。

 そうだな………馬場は今回の連続殺人から外せ。

 それでよろしく。」


 秘書は「承知しました。」と言い退出していった。

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