剥奪

「 いやはや、直々の命より捜査の完了の方が大切だと思うのですがね 」

「 上が何やるかなんて、どうだっていいですよね 」

 竹下と中沢は颯爽と警視庁に入った。


 言われるがままに二人は総監室に向かわされる。

「 入れ 」

 そこにはめっちゃ威厳を無理やりつけた総監と副総監がいた。


「 本日は、如何様いかようで? 」

 総監はふー、と深く息をついた。

「 お前らの捜査権を凍結するっ! 」


「 だそうですよ、竹下さん 」

「 そうですね、それはまあ、それなりに困りますね。 ご用件は、以上ですか 」


「 以上だ。絶対に今回の件に首を突っ込むな 」

「 ………わかりました。では、中沢くん、行きましょうか 」

「 はい 」

「 おい待てっ、どこ行くん…… 」


 すでに二人は再び外回りへと向かった。

 儚くドアが音を立てて閉まった。



「 竹下さんに言われてから気づいたのですが、やっぱ、あの校長、怪しいですね 」

「 校長と総監との間には何か関係があるのかもしれません 」

 警視庁を出る。

 日は朝より高く、ぽかぽか陽気だ。


「 ……もしそうならば、彼には隠したいことがある。しかし今日、警視庁の人間がその辺りを嗅ぎ始めた。

 そうだ、警視庁の上になんとか融通を聞いてもらおう、という話になりますね 」


「 資料を取りに行った時に、私たちの目を盗めましたね、そういえば 」

「 迂闊でした。それはともかく、融通が利いたのならば、上とのなんらかのコネがあった、ということになります 」


「 そしてわざわざ私たちの捜査権を潰す。これってリスクありますよね 」

「 私たちが探れば校長と上との関係など、いとも簡単に明るみに立たせることができましょう。

 上もそれをわかっているはずです 」

 自信過剰も実力がある故。


「 つまり…… 」

「 上は、校長になんらかの貸しがあった、ということになるのでしょうか 」

「 それって、やばいやつですか……? 」

「 かも、しれませんよ…… 」


 竹下と中沢は身震いした。

 今日の最高気温は12月ながら3月の陽気になった。


「 大事になりますね。ゾクゾクするほど楽しみです 」

「 警察全体の問題を見つけたら、私たちなんてゴミ収集に出されちゃいますよ…… 」

 彼は御構い無しに進んだ。

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