内密

「 こちらの高校に在学中、彼ら、井村さんと森さんの中についてお聞きしたいと思います 」

「 何せ私はずっと校長をしてきましたので、なかなか覚えていない、というかなんというか 」

 校長は何やら冷や汗を流している。

 彼の手が滲んでいる。


「 では、当時の担任の方はいらっしゃいますか? 」

「 あ、はい、調べて参ります 」

 校長は職員室の方へ向かった。


「 竹下さん、身元くらい僕にも教えてくれればよかったじゃなかったですか。

 しかも共通点まで見つけて……教えてくださいよー 」

 中沢がソファーから机に乗り出した。


「 まあ、落ち着いて 」

「 落ち着いてます 」

「 ところで、あの校長先生、何か臭いませんか? 」


「 話ずらさないでください。それに、あの人、臭くありませんよ。

 ちゃんと身なりもしっかりしていますし、風呂にもはいってるでしょ 」

「 そういう臭いではありません 」

「 と言いますと……? 」

「 …………と、言われましても 」

「 何だ…… 」


 校長が戻ってくる。

「 お待たせ致しまし…… 」


 校長室のドアががちゃんと開いた。

「 ちゃんと上の許可、もらってください。困ります 」

 馬場と長沢がいた。


「 困っていれば、良いのでは? 」

「 竹下さん、総監がお呼びです 」

 呆れてものが言えない、というふうに長沢が言った。


「 総監がお前らに直々の命令だとよ。早く出て行って下さい 」

 直々の命令とはなんでしょうかね……、と呟きながら竹下と中沢がすごすごと退席した。


 馬場がソファーにしっかりと座り直して校長と話し始めた。

「 ここからのことは、内密にお願いします 」

 ひそひそと黒い影が動き出した。

 竹下は知る由もない。

 ただ何となく彼に伝わるものがあった。

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