第5話同族だけど、バカな奴

ん? まだ帰らないの? 君も何が知りたいのか、ちょっとわからないな。


僕の給仕係が何してるかって? 見ればわかるだろ?

僕の方が終わったから、新参者を世話しているのさ。

そう、僕は心が広いからね、給仕係を貸してやってるんだ。


「はーい、どんぐり君。ピーナッツだよぉ。うはぁ! いつみても豪快だね! そのままだと、トンネルくぐって入れないよ? しょうがないなぁ。はい、出してね……。ん、これでいいよね? あら、殻を取ったら足りないかぁ。もう、しょうがないなぁ」


うん、奴はあの通りバカだ。

のりこの指が口に入ってくるんだぞ? 屈辱だろ? それでも奴は、殻のまま食べる。学習ってもんがないんだ。横に広がった口では、元々僕の使っていた巣穴への入り口には入らない。僕がやれば通れる大きさになってるんだ。奴では無理だろう。


でも、のりこものりこだ。

毎回、毎回そうなるとわかってて、ピーナッツを殻付で渡すんだからな。


ここは学習能力が少ない奴が多くて困る。君も見ていてそう思うだろう?


なんだって? わからない? バカなのか? 君は、見ても分からないバカなのか?

こっちは、本当に困ってるんだぞ。


なに? そんな風には見えないって?

もう、完全に他人事だな、君は!


まあ、いいさ。そもそも分かって欲しいなんて思ってないよ。つい、話せると思って油断した僕の方がバカだった。


そうさ、こうして住処が分かれているのに、また、アイツがやってくるんだ。

わかるか? もう少ししたら、悪魔の時間になるんだ。


いや、いい……。

僕の言っている意味が、もうすぐ分かるよ。


ちゃんと見ておくんだよ! なに? 忙しそうだね? 当たり前だろ? バカなのか君も? 走っているんだから、あたりまえだろ? いくら走っても前に進まない。


この究極の矛盾。君にこの難題に挑戦し続けている、僕の気持ちがわかるかい?


「じゃあ、どんぐり君も満足したかな? じゃあ、くるみちゃんと一緒に遊ぼうか! いいよね? くるみちゃん。二人は仲良し! だもんね!」


全く、まったく冗談じゃない。なんで、こんな奴と一緒に。毎日、毎日……。それに、僕は遊んでるんじゃないんだ。


まあ、のりこに言ったところで、わかるはずもないんだけどね……。


『はろ~。くるみちゃん。ごきげん、いかがぁ?』

『ふん、貴様の相手をしてやる義理もないが、今日は新記録達成で気分がいい。あと、客人もいることだし、珍しく話をしてやろう』

『うは! 相変わらず口が悪い。そんなんじゃ、私のお婿さんにはなれないよ? 食べちゃうよ?』

『誰が貴様など! 第一、種族が違うだろ! 無駄に図体のでかい貴様らゴールデンなど。僕たちジャンガリアンが相手するわけがない。それに、これでも僕は今忙しいんだ!』


「あらぁ、くるみちゃん。仲良く遊ぼうよ。どんぐり君も見てないで、一緒に回そうね」


バカを言うな、のりこ。

こんなのと一緒に出来るはずがないだろう!


ん? 何してるのかって? 見てわからないのかい? のりこが僕の崇高なくるくるを、バカな新参者と一緒にさせようとしてるんだ。


どれだけ走って前に進まないという、究極の矛盾。その難問に、日々格闘しているこの僕に向かって、そんなことを聞くのかい?


本当に、君もバカの仲間なのか?


『じゃあ、おじゃましますぅ~』

『おい! なぜ、そっちに向いて! 逆だろ! あ! ああ! ああぁぁ!』


「あはは! どんぐり君、逆だよ! 逆に……。あはは! やっぱり、くるみちゃんが投げ出されちゃったよぉ~。くるみちゃん。大丈夫~? あっ、起きた」


『やっほー。くるみちゃん。はやくおいでよぉ~』


まったく、これだから……。毎回、毎回……。


え? 大丈夫かって? 大丈夫じゃないよ! 見てわからないかい?

僕の究極の矛盾。その答えに、あと一歩だというのに……。


また、うやむやになってしまったんだ。大丈夫なわけないだろ!

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