血の運命に翻弄される、双子の王子の物語。

燃えるような赤毛、赤い瞳、尖った耳を持ち、戦いを好む勇猛な魔族ウーレンの王・ギルトラント。銀髪碧眼、平和を好む慈愛の魔族エーデムの王の妹・フロル。二人の結婚は政略ではなく愛によるものだったが、二人の子ども達に引き継がれた血は、彼らの運命を引き裂くものだった。
王位継承権をもつ双子の兄・セルディーン(セルディ)には、エーデム族の銀髪碧眼、弟・アルヴィラント(アルヴィ)には、ウーレン・レッドと称えられる赤毛赤眼が表れていた。自身の容姿と民の期待との違いに苦悩するセルディに、父王はかける言葉がなかった。やがて、双子の運命の車輪は、彼らが思いもよらなかった方向へと回り始める。


『エーデムリング物語』の続編です。前作では主人公の一人だったギルトラントの息子たちが中心です。フロルもメルロイも登場しています。
物語を通じて圧巻だったのは、自身の容姿と相反する気質、二つの魔族と人間との間で複雑に絡み合った、王子達のアイデンティティを巡る葛藤でした。双子の王子が引き裂かれた後、それぞれの立場が変わり、出会った人々の影響や経験を経て内面が変化していく過程が、よく理解できました。

「血によって束縛され、貶められている人々を解放する」為に戦っていたはずのセルディが、最終的には、最も自身の「血のもたらす運命」に支配されていたようなのが、哀しかったです。
美しい極上のハイファンタジーです。