第22話 ライト先生

「・・・ライト」

「・・・早弓・・君」


二人は熱くなった僕を見て言う。

覚悟を決め、何が何でも3人を守る固い気持ちになっていた。

それを見て、薫は何故か微笑みを浮かべた


「ライト・・・ごめんね。」


そう薫が謝ってきた。

「私・・・確かにあいつのことが怖い・・・どうすればいいか、正直わからないや・・・ライト、今きっと伊藤に対して、ぶん殴りたい!なんて思ったんじゃない?」


「う、うん・・・」


それを聞いて、愛美が間に入ってきた。

「無理よ・・・あいつには勝てない・・・」


「なぜ!?」僕は問う


「あいつは、多分、町内1喧嘩強いから・・・」


その言葉を聞いて、薫も愛美に同調するように入ってきた。


「うん、たぶんこの辺の中学生の中で1番強いね・・・私も体力に自信あったし、その辺の男の子相手なら逆に泣かせてやることもできるよ。でも、そんな私を、あんな目に合わせられる相手・・・それが伊藤だよ・・・」


それを聞いて僕は落胆する。

「なら、このままやられ続けるしかないの・・・?」


そして、薫は笑みを浮かべ、こう述べた

「だからこそ、秘密基地行って、3人で作戦会議だよ」


僕ら二人はその発言に驚く


僕は

「じゃあ、喧嘩で勝つ方法を考えるの?」


「んーん。暴力に対して暴力で解決する・・・それは間違っていると思う・・・本当は憎くてそうしたいところだけど、ぶん殴ってやりたいけど、根本的な解決じゃないと思う。」

薫は唇を噛みしめながら言う


僕は、その表情の薫を見て、斎藤先生を思い出した。

「先生に言ったところで、根本的な解決にはならないのかな?・・・斎藤先生は『学校全体の問題だ』って言ってくれたけど」


そういうと彼女は考え込んだ。

その姿を見て、愛美は

「私は、大人に頼るのは反対・・・先生に言ったところでも、大人は自分たちの利益になることしか考えないから・・・」


愛美は大人を信じていない様子だった。僕らも、その言葉には何も言い返すことは出来ない。僕は彼女の言葉の気持ちはわかる気がした。

それもそうだろう・・・特に僕の家庭環境は、酷いものなのだから

『大人は信用できない』その通りだと思う。


僕らは、秘密基地まで歩くことにいした。

二人は前を歩き、何やら会話をしている。その表情は仲良さそうな感じではなく、難しい表情をして、何かを話し合っているように見えた。


僕は後ろを歩き、彼女たちに着いていくような感じで歩く

その間、僕は僕なりに考えていた。

(どうすれば、あいつらのやりたい放題の行動を抑えることが出来るだろうか・・・どうすれば、伊藤に勝てる?)

そんなことをずっと考えていたが、答えが出ない。


徐々に、秘密基地に近づく、次第に気温も上がってきて、さらに夏の暑さと言うものが、僕の肌に突き刺さっている。曇っていたのもあり、ムシムシした暑さも僕の体力を奪っていった。


薫はその暑さにさすがに参りそうになっているのか

「本当に暑いね~」とタオルで額の汗を拭く

それに対して、先ほどまで喧嘩していたのが嘘のように愛美も

「うん、この暑さ、ほんと嫌だ・・・」


「わかる~汗止まらないもん」


そんな会話が聞こえてきていた。

いつの間にか仲良くなっているようにも見えた、僕は少し安堵した気持ちになる。

(女の子って本当にわからない・・・)

僕はそう思っていた。


そして、秘密基地の前に到着する。

愛美は

「へーすごいね!ここが秘密基地なんだ!」と少し興奮気味に言う


「まだまだ、やることたくさんあるの、愛美ちゃんも手伝ってね」と薫は言うと置きっぱなしにしていたリュックの中をゴソゴソと、何かを探っていた。


「あったあった」すると、また、薫は爆竹を取り出し、導火線に火をつけ、秘密基地の中に投げた。




パンパンパンパンパン!




秘密基地に再び、爆竹の音が鳴り響く、そして、コウモリの大群が外に出てくる。

それを見て、愛美は驚き尻餅を着いた。


それを見て当然、愛美は驚いた。


「ちょっと!びっくりした!薫!」


「あはははははは、ライトと同じ反応だ」


「ちょっと!こんなやつと一緒にしないでよ!」


その何気ない言葉に、薫はちょっとムッとした表情を浮かべる


「『こんなやつ』って愛美ちゃん、ライトの何を知ってるの?」


「えっ・・・そういえば、情けない姿しか見たことがない・・・」


「ライト、どんどん変わっていってる。このわずか3日でね。元々、優しくて、知らないかもしれないけど、すごく勇気を持ってるよ」


そういうと、薫はリュックからランタンを取り出して秘密基地の闇の中に入っていった。


すると、僕と愛美二人きりになった。

愛美は

「早弓・・・やっぱり、本当はあの人『彼女』なの?」と問う


僕は焦りながら、顔を真っ赤にして

「ち、違うって!」と否定した。


「ふーん・・・まぁいいけど、なんで、あなたに対してそんな苛ついた表情したんだろう・・・」


「さ、さぁ・・・」


この時、以前『公園で家庭崩壊のことや貴志たちにイジメられていることなどを話した』なんて言えるはずもなかった。リンチの中の一人が愛美なのだから・・・


僕らも秘密基地の中に入っていった。


中に入るとコウモリの糞と思われる物がたくさん落ちていた。

僕らはまず、掃除をすることから始めた。川から水を持ってきて、リュックから岩を小さいブラシでこすり落とす。


3人でその作業をやった後、濡れた所を、雑巾を使って拭いて、ようやく落ち着ける環境になった。ここまで時間にして2時間ほどか・・・結構な時間が経った。


薫は

「よーし、ようやく準備完了だね!さぁ、さっそくやろうか!」


僕ら二人は、その時点でくたくたになっていた。

「ちょっと・・・休憩しようよ・・・」

愛美はぐったりした様子で、その場で大の字になって寝っ転がる。

「薫ちゃん・・・今日は力を使う作業しないって言ってなかったっけ・・・」

僕も疲れすぎて、その場に座り込んだ。


そんな二人を見て、薫は頭をポリポリと掻く

「まったく、二人ともだらしがないなぁ、このくらいで疲れてちゃだめだよ」


僕らは、まったく疲労を感じていない薫に驚愕した。


すると、薫は白い袋をゴソゴソと何かを探りだした。


「さーて、ライト、今日から君にお願いしたいことがあるの」


(僕に?また力仕事かな?勘弁してよ・・・)


そう思っていた僕は甘かった・・・


薫は学校で指定された宿題を手に取りだす

「愛美ちゃんは、勉強得意なの?」


「えっ・・・うーん。普通かな」


「そっか、じゃあ、愛美ちゃんはいいや」


すると二人とも僕をじーっと見てくる。


薫はニヤニヤしながら、僕を見てくると







「ってことで、今日から、ライト、先生役だから」






(えっ!?せ、先生!?僕が?)


続けて、彼女はとんでもないことを言い出した。





「ライトがちゃんとやってくれなかったら、私宿題出来なかったことになるからよろしく」





僕は立ち上がり


「えっ!?そんな!」


と驚きの声を出す。


すると、愛美もとっさに立ち上がり


「ちょ、ちょっと!私までなんで、早弓に宿題見てもらわないといけないのよ!」


「うーん、連帯責任ってやつかな」


「れ、連帯責任っていつからあたしあんた達の仲間に・・・」


「『秘密基地』知っちゃったしね~、愛美ちゃんにも色々やってもらうからね。ライト改造計画。」


(か、改造計画?そんなのあったの?)

僕は戸惑った。


すると、愛美は困った表情をして、悩みだした。


「早弓、改造計画か・・・本当にそんなことできるの?」


すると、薫は指を顎にあて考え出す。そして、言葉を発した。

「今のところ順調だよ?よく見て?少しだけ顔つき変わったと思わない?」


すると愛美は僕の顔を覗き込むようにじーっと見つめてきた。

それに対して僕はすごく恥ずかしくなり、目線を反らす。顔も真っ赤になっていた。


「うーん・・・いつもの早弓と変わらない気がするけど・・・すぐ顔赤くなるし」


それを聞いて薫は笑っていた。


「あははははは、まだ、夏休み3日目だもんね。そんなに見た目に変化はないか!」


しかし、愛美は先ほどの事を思い出して

「でも、早弓があんなセリフ言うのはびっくりしたけど・・・」


僕は

「あんなセリフ?」と聞き返す。


「早弓、普段学校だと無口で、やられたい放題だったのに『僕がみんなを守って見せる!』あんなこと言えるんだね」


「あれは・・・あの・・・その・・・」僕は恥ずかしくなり項垂れた。


薫は笑みを浮かべて、二人して顔を覗き込むように

「『私』を守ってくれるんだもんね?」

とニヤニヤしながら言ってきた。


「あ、あの・・・いやぁ・・・・」と僕は照れていた



そして、この日から僕は色んな『責任感』と言うものを感じるようになる。

二人の宿題を見なければいけないこと、そして、先生役に大抜擢されたこと、薫と愛美、そして、梨乃を守っていかなければならないこと・・・これも一つの「成長」なのかもしれない。


(僕に出来るのだろうか・・・3人を守ることなんて・・・二人の宿題を見るなんて・・本当にできるのか?)


僕は不安を抱えていた。


それと同時に・・・


(作戦会議は?)と言う疑問を抱いていた。












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僕は猪突猛進の彼女に改造される ギグス0211 @giggs0211

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