第3話女神の端末

『街の下水掃除!街全体の下水を掃除してくれる冒険者様を募集しております!報酬は1000yen!』

 

『ペットを探しています。見つけてくれる冒険者様を募集しています。報酬は500yenです。』

 

『森に薬草を取りに行ってください。ノルマを達成してくれたら報酬1500yenです。』


はぁ…。さすがにレベル低めの駆け出し冒険者向けの依頼は賞金が安いな…。


一刻も早く自給自足のスローライフを楽しみたいのだが、俺は今最大の問題に直面していた。いや、前から薄々気づいていた問題だ…。マイホームを建て、畑を作り、家畜を育て、自給自足の生活を送る。この夢にまず最初に必要になってくるもの…それは…


金だ…。


金が無ければマイホームは建てれないし、畑を作る道具も買えない。家畜を買うこともできないし、そもそも何もできない。しかも、この世界では木材がかなり高額で、マイホームも100000000000yenもするという転生者に厳しい値段だ…。確かに冒険者ならば、テントなどを使って野宿したり、宿を借りたりなどして過ごすのが普通だろう。だがしかし、俺はこの世界にスローライフを送りに来たのだ。多忙だった前世の分を取り戻すだけののんびりとした余生を過ごすために来たのだ。ならば冒険者らしくいろというのがおかしいだろう。つまり、俺は今、冒険者として依頼を探しているのだ。それも、マイホームを買う金を稼ぐのにちょうどいいものを。


しかし、やはり一刻も早く金を稼ぐには上級者向けの依頼でも受けてみるしかないかな…。まあ、レベルやステータスは上限に至ってるわけだし、大丈夫だと…思う。


『ギガントデビル討伐求む!西の洞窟にギガントデビルが棲みすきました!危険なので討伐お願いします!報酬5000000yen。』


おお、さすがに上級者向けの依頼は賞金が高いな。もうちょっと高いのは無いかな。


『魔王の幹部が来た!北の丘に魔王軍の幹部が降り立った模様です。至急、実力のある冒険者様の対処を求めます!街が危険です!報酬300000000000yen』


おお!この依頼賞金高いな!マイホームが三つも建てれるぞ!こんだけあれば必要なものが全部揃う!至急の依頼らしいし、やってやるか!


そうして俺は、魔王の幹部討伐という無謀な依頼を、賞金欲しさに受けたのであった。そしてなぜか受付の時受付嬢が目を輝かせて「やっぱりすごい方なんですね!」と握手までされた。




とりあえず、北の丘と呼ばれるところに来てみた。あたりを見回しても魔王の幹部らしき人物はいない。受付嬢の話によるとここであってるはずなんだが。


「もう自分の陣地とか魔王上みたいなところに帰っちゃったとかそんなことはないよな?」


などと独り言を言い、残念がっていると…。


「ああ、そんなことはないぞ。」


と、背後で声がした。


「丸腰だった故、とおりすがりの旅人かと思い見逃そうかと思ったが、我に用があるとはな。魔王軍幹部が一人、このドラウに用とはいったい何だ?」


漆黒の鎧。顔が兜で見えないことからも底知れぬ恐怖を覚えさせる。そして何より目に見える程の暗黒のオーラを放っており、多忙とはいえ平和な国で生きていた俺からすれば本当に恐ろしい鎧の騎士だ。


「いやぁ、俺一応冒険者なんだけど、あんたの討伐依頼があったものでそれを引き受けちゃったんだよね…。」


「ほう?それではよほど腕に自信があるのだろうな…?」


兜の中から話しているせいか、声がくぐもって聞こえる。それがなおさらこの騎士の凄みを増させているように思える。


「まあ、まだ冒険者になったばかりなんで自分の腕とかはわからないかな…。」


ステータスはカンストしてるけど…。


「なんだと!貴様駆け出しの分際で我を討ちに来たというのか!身の程をわきまえないにも程がある!」


そう言うと、周りの暗黒のオーラを燃え盛らせながら、ドラウは剣を抜いた。


「もういい、死ね。」


ドラウがすごい剣幕でこちらに剣を向けてきた。金が無かったので丸腰で来てしまったが、どうして武器を用意してこなかったのだろうと己の浅はかさを恨んだ。ドラウがこちらに切りかかってくる。俺は死を予感してとりあえず右手を前に突き出す。かすかな抵抗だ…。ああ、異世界に転生してほんのちょっとでまた命を落としてしまう…。すまん、ティアマト…、せっかく新しい生をくれたのに…。


「ずべれっふ!!!」


ん?何か右手に当たったような…?


目を開けてみると、そこには顔面をへこませて血を吐き出して死んでいるドラウが倒れていた。


なにが起こった…?だいたい予想がつくが…。


「ドラウのレベルは55なので、まあ当然の結果ですね。」


声の方向を見ると、いたずらな笑みを浮かべた女神が、否、妖精ほどの大きさになった女神がいた。


「おまえ…、女神ティアマトか…?」


「はい!まあ、本体ではなく端末のようなものですけど…。女神サービスその3!端末である私があなたのお手伝いをさせていただきます!様々な知識を得るのにお使いください。あ、それと女神サービスは以上3つで終了です!」


まだあったんだ女神サービス…。


「じゃあ、最初の質問、この世界の標準レベルって…?」


魔王幹部のドラウが55ってことは…。


「そうですね、生物全般の平均だと低すぎるので、冒険者や魔王軍のレベル平均を言いますね。25レベルです!」


な…。


つまり俺はこの世界で最強にも近い存在だと言うことか…。


こうして俺は魔王軍幹部を倒した報酬により、大金持ちになった。

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