水原さんとお出かけ①

 七夕祭りの次の日、俺は水原さんとの待ち合わせ場所である駅前にいた。丁度お昼時の時間だったため、駅も沢山の人で賑わっていた。

 以前から遊ぼうと言われていたが、なかなか予定が合わなかったが、今日はなんとか予定があったので、こうして今待っている状態だ。

 休みの日に女性と遊びに行くなんて初めての事だったため、何にも準備していなかったが大丈夫だろうか。

 一応30分以上前に集合場所にいるが、何をして待っていればいいのか分からずソワソワする。

 陽菜には職場の人と遊んでくるという説明で渋々納得してもらった。

 何故か遊びに行くのが女なのかしつこく聞かれたが、あれはなんだったのだろうか。

 そんなことを考えるていると、駆け足で水原さんがきた。


 「遅くなってすみませーん! ……だいぶ待ちましたよね?」


 水原さんは肩で息をしながら申し訳なさそうに謝ってくる。


 「そんなに待ってないぞ? というか、待ち合わせ時間は過ぎてないんだしな」

 「……でも、ギリギリにきてしまった結果、待たせてしまったので」

 「……そんなの気にする必要ないっての。時間通りにきて謝られたら、時間設定する意味なくなるだろ」


 そもそも、俺の判断で集合時間の30分前に来てるのであって、そこを気にする必要は全くない筈だ。

 謝るのは集合時間を大幅に過ぎた時だけでいいと俺は思う。


 「ならよかったです!」

 「おう!」


 水原さんの服装は、上は無地の白のパーカーで下はジーンズと、ラフな格好だった。


 「なんか意外だな。もっとあざといような服を着てると思ってた」

 「なんですか、あざとい服って」

 「いや、水色とかピンクとか、いかにも女子です! って感じの服かな」

 「私、前ピンクの服買った事あったんですけど、それが絶妙に似合わなかったんですよ」

 

 そんな事言ってるけど、ピンクも似合うと俺は思うけどな。


 「それで、今日はどこに行くんだ?」

 「今日はですね〜、スポッジャに行きますよ! 今日は運動してストレス発散しましょう!」


 なるほどな。だから動きやすい格好でって

 いうメール内容だったのか。納得だわ。


 「スポッジャか。最近運動してなかったし、丁度いいな」

 「そうでしょう! 私も最近運動できてなかったので、今日は楽しく身体を動かしましょう!」

 「そうだな」


 少し歩き目的地であるスポッジャに到着する。


 「何時間くらいにします?」

 「3時間くらいでいいんじゃないか? その後足りないと思ったら、バッティングセンターとかに行くのもありだな」

 「ですね! なら3時間のコースで行きましょうか!」

 「だな!」


 受付の人にお金を払い、中に入る。その後ロッカーに荷物を入れた。

 やはりというべきか、休日なのもあって人が沢山いる。待ち時間とかを考えると、そこまで遊べないかもしれないな。

 

 「秋本さん。最初は何します?」

 「空いてるやつからにした方がいいかもな」

 「そうですね。待ち時間勿体無いですし」


 俺たちは空いている所を探すが、やはり大人数でできるようなやつは人が沢山いた。

 うろうろしていると、卓球台が目に入る。

 卓球も人気があり、やっている人が沢山いたが、一箇所だけ空いている台を発見した。

 

 「秋本さん。 まずは卓球にしますか?」

 「そうだな。丁度空いてるみたいだし、やるか!」

 「ただやるだけじゃつまらないので、今日の夜ご飯をかけて勝負しませんか? 負けた方が奢るという事でどうです?」

 「その勝負のった。負けても恨みっこなしだからな?」


 陽菜と戦って以来、元経験者だからといって油断する事は禁物だということを学んだ。

 まぁ陽菜の場合、油断しなくても圧倒的実力の差を見せられ、経験者と名乗るのも恥ずかしく思ったのだが。

 まぁ今回はいける気がする。

 今でこそ卓球も有名なスポーツになったが、俺が卓球部だった頃はそこまで有名でもなかった。

 そう考えると、ピンポイントで卓球をやっているとは考えにくい。

 水原さんには悪いが勝たせてもらうぞ。


 「それじゃ、私のサーバからでいいですか〜?」

 「いいぞ。どこからでもかかってこい!」

 「それじゃ〜、えいっ!」


 なんとも呑気な声を出して打ってきたが、ボールにスライス回転をかけて球を曲げてきた。

 俺はびっくりして取りこぼしてしまう。


 「す、凄いサーブだな。もしかして経験者だったとか?」

 「いえ、学校の授業でしかやった事ないですよ?」


 陽菜といい水原さんといい、どうして俺の周りの女性は運動神経がいいのだろうか。

 これじゃあ卓球部だった事、恥ずかしくて言い出せないじゃないか。


 その後も水原さんの一方的な展開でマッチポイントまでいってしまう。


 「ここをとれば私の勝ちですね! 夜ご飯は頂きです!」


 水原さんは調子のいいことを言っているため、少し腹が立つが事実なため何も言い返せない。

 まさかこんな一方的な展開になるとは思っていなかった。


 俺からのサーブで始まり、何球かラリーを繰り広げる。

 コーナーギリギリに打たれなんとか拾うも、それがチャンスボールとなってしまう。

 それが仇となりスマッシュを決められて俺の負けが決まった。


 「やりました! 夜ご飯が楽しみです!」

 「……俺は手も足も出なかったよ」

 「今回は私が勝ちましたが、次やった時は秋本さんが勝つかもしれませんよ?」


 水原さんからのフォローが入るが、今はそのフォローが心に響く。

 もう少し卓球の練習をしないといけないなと思った俺であった。


 


 


 

 

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引き取った彼女がファザコンになった件について こめっこぱん @komekkopan808

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