七夕その後〜陽菜side〜
七夕祭りで、私は短冊に『これからもパパとずっと、ずーっと一緒にいれますように』と書いた。その他に小さい文字で『パパ、大好きだよ!』なんて書いてしまった。
パパに見られると恥ずかしかったから見せる事はなかったけど、パパも同じ気持ちだったらいいな。
飾った後、弱い風が吹いて短冊が回転した時は焦ったよ。後ろ向きで飾ってたから、回転すると普通に見えちゃうし。
幸いパパは気づいてなかったからいいものの、見られてたら終わっていた。
家に着き、お風呂に入ってからすぐに私とパパは寝た。寝てる最中、私は夢を見た。それも懐かしい夢だった。
両親の葬式の日のことだ。葬式の時、私を誰が引き取るのかという話をしているのをたまたま聞いてしまった。
『あいつの子なんて、私は引き取りたくありませんよ!』
『俺も無理だな。第一、引き取るだけの余裕がない』
『それもそうだな。なら、何日か後に施設に連れて行くとして、それまでは私が面倒を見よう』
『わかりました。そうしますか!』
『それに、親戚といっても、所詮他人なんだから私たちが引き取る必要ないのよ』
親戚達の会話は、こんな感じだったはず。
それを聞いた私は、ひどく落ち込んでたっけ。誰にも必要とされていないどころか、親戚の人たちにまで他人扱いされていたんだから、当然か。
その時、私は面倒がかかる邪魔な子だということに気づかされたんだっけ。
そこからだ。早く親戚の家から出たいと思ったのは。あの日、親戚の家から出てなかったら、パパに会えていなかったらと考えると、ゾッとする。
そこで一旦私は目を覚ました。隣を見ると、パパが気持ちよさそうに眠っていたので、安心する。それを確認してからもう一度私も寝る事にした。パパを抱きしめる力を少し強めると、パパは無意識なのか私の頭を撫でてくれた。その事に安堵した私は、朝になるまで嫌な夢を見る事はなかった。
「おはよ〜! パパも早く起きろ〜!」
「起きるの早すぎじゃないか? 今日土曜日だぞ?」
「ちょっとね。嫌な夢見ちゃってたから、目が覚めちゃったよ!」
「嫌な夢?」
「うん! 両親の葬式の時の夢見ちゃって」
あははと笑いながら言う私とは逆に、パパは険しい顔をしていた。
「パパ、どうしたの? 顔、怖いよ?」
「そんな事ないだろ。 そんで、どんな夢だったんだよ?」
「ふふっ、教えなーい」
「ここまで引っ張っといてそりゃないぜ。……辛くなったら言うんだぞ?」
「……うん! その時はちゃんと言うね!」
「おう。そうしてくれ。それにしても夢か〜。俺、ここ数年は夢を見てないな」
「えっ?! そうなの? 私、しょっちゅう見てるよ!」
パパとあんなことやこんな事をしている夢とか。それもいつもいいところで終わっちゃうんだよね。ほんと、最後まで見させて欲しいもんだよ。というか、1週間に一回以上はこういう夢を見るんだよね。私、欲求不満なのかな?
「どんな夢を見てるんだ?」
「好きな食べ物を食べてる夢とかかな〜」
流石にあんな事は言えないよね。言ったら終わる気がする。
「へぇ〜。いいなそれ。俺も夢見たくなったわ」
「でも、夢見るってことは、眠りが浅いって事だから、あんまり良くないんじゃない?」
「それもそうだな。んじゃ今日はなんもないし、もう一眠りしようかね」
そう言ってパパはベットの中に入って眠る体勢になっていた。
それを見た私も、パパの隣に移動し抱きしめながらもう一眠りする事にした。
今日くらいはゆっくりしていいよね。それに、こんな日があってもいいよねと思いながら、眠る私だった。
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