満員電車

 満員電車の乗降をそし

 らぬようすで、ぼくが

 見た先にある宇宙に似

 た瞳に宿した小さな輝

 きを抽出する機械が作

 れたら、ぼくは小さな

 星の中からおきにいり

 の星を一つ、大事にだ

 いじに育てるんだ


 大きく成長した星から

 クローンを作りあげヒ

 ッチコックの鳥みたい

 に美しい恐怖を満員電

 車のみんなに、夕方5

 時に鳴るサイレンみた

 いに強制的に与えたい


 そのとき呆気に取られ

 て逃げ惑う人に押し倒

 された彼女に手をさし

 のべるのが僕であれば

 、どんな恋愛映画より

 素敵に、彼女が死んで

 いくまでをスクリーン

 に映しだせる


 どんっ

 と、肩に当たりながら

 降りていく人の背中か

 ら

 どんっ

 と、また

 どんっ

 と、みんなが電車から

 降りていくその様子は

 社会に投身自殺してい

 く行列に見えたし、そ

 こに彼女もいる


 そしらぬようすのカラ

 スを振り返るとそこに

 姿はなく、見た先にあ

 る宇宙も消え、満員電

 車で一人、僕は大人に

 なれない

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