僕の世界をつつみこむ色々なもの

君、布団、じめじめする空気、家、もう一回じめじめする空気、地球、宇宙、宇宙よりもっと大きななにか。順番に僕をつつみこむ、愛しい世界のミルフィーユ。美味しいケーキを食べながら、「やっぱり、ショートケーキよりミルフィーユが食べたかった」といった君が、オゾン層が地球を完全につつみこんではいないように、僕を100%つつみこんでいるわけではないんだと知った頃から、君はすっかりと僕の前から姿を消すことになった。でも残像の君は、今でも僕が呼べば僕の家に来て、僕を90%くらいはつつみこんでいく時、布団の100%も90%なんじゃないかと疑ってしまう。そうなるとじめじめする空気は70%くらいの信頼で、家なんて50%くらいの半信半疑。あとはもう疑うばかり。それでも僕が、君を呼んでしまうのは、その90%でも僕をつつみこんでくれると、僕はやっぱり気分がいいからで、それは依存に近いのかもしれない。僕たちは、色々なものに依存して 生きていて 例えば、家。家に依存しているのが人間ではなくて、人間に依存しているのが家だといえないだろうか? 家は人間がいないと汚れる潰れる廃れる。中の空気は循環をやめて時は止まりそれは世界から隔絶されて忘れ去られ、つつみこむ優しさも忘れた先に、なにもない。認知されない、個としてあるものの存在を誰が、確かめられるのだろうか。僕は薄く、一枚一枚剥がされていくミルフィーユの層を、どうにかこうにかつなぎとめる方法を模索するために、今日も残像の君の90%より少なくなってしまったものにすがりついて生きたい。


でも残像の君から返事は、まだ、ない。

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