電撃文庫について

 ――ラノベ好きで知らない人、いる?


 開幕と同時に、そんなため息ともつかないボヤキが漏れてしまう。

 そんな存在。


 代表作を挙げるだけで、WEB小説で言う約一話分の文字数を稼げるのではないか。

 そんな考えが浮かんでしまう存在。


 そう。

 それが『電撃文庫』。


 今年(2018年)で創刊25周年を記録し、1000万部達成を成し遂げた化け物作品をいくつか抱える、業界最大手と言って過言ではない老舗レーベルである――。



 さて。


 そんな電撃について、まずは恒例のwikiから引用してみましょう。


――以下引用

メディアワークスの若者向け文庫レーベルとして、1993年6月に創刊された。初回刊行タイトルは『漂流伝説 クリスタニア 1』(水野良)・『聖マリア修道院の怪談 極道くん漫遊記外伝』(中村うさぎ)・『ダーク・ウィザード 蘇りし闇の魔道士』(寺田憲史)・『瑠璃丸伝 当世のしのび草紙 1』(松枝蔵人)の4タイトル。


創刊当初は、それまで角川スニーカー文庫を基盤に活動していた深沢美潮や中村うさぎ、あかほりさとる等の作家陣が書く小説と、テレビゲーム・アニメ等のノベライズ・翻訳小説を中心に出版していたが、新人作家を積極的に発掘するために、1994年「電撃ゲーム3大賞」の小説部門として「電撃ゲーム小説大賞」(2004年「電撃小説大賞」と改称。)が創設された。この新人賞は、シリーズ化されレーベルの看板的作品となる『ブギーポップは笑わない』で第4回電撃ゲーム小説大賞を受賞した上遠野浩平など多くの人気作家を輩出し、レーベルの隆盛に貢献した。現在では、電撃小説大賞出身のレーベル生え抜きの作家によるオリジナル小説が中心となり、最も人気のある少年向けライトノベルレーベルとして目下ライトノベルの国内最大シェアを誇る。この成功には、積極的なメディアミックス展開やイベント開催、「電撃組」と呼ばれる書店への優先配本による効率化、書店での販促用ポストカードの配布など、多様な販売戦略も奏功した。


2015年現在、新刊の発売日は毎月10日で月に15冊前後の新刊が発売される。2004年10月発売の『キノの旅VIII the beautiful world』で通算1000タイトルを、2010年9月発売の『ゴールデンタイム1 春にしてブラックアウト』で通算2000タイトルを、2015年10月発売の『ヘヴィーオブジェクト 外なる神』で通算3000タイトルを記録した。2009年11月、総発行部数が累計1億冊を突破し、それを記念したキャンペーンなどが行われた。『とある魔術の禁書目録』(2010年10月)と『ソードアート・オンライン』(2012年12月)が1000万部突破を達成している。


「電撃の単行本」として単行本(ハードカバー)の形態で出版されるものもあり、そちらは普段ライトノベルを読まない層を狙って発売されている。特に『図書館戦争』は新聞や雑誌の書評で大きな話題を呼んだ。また、2009年12月には、姉妹レーベル的な存在として“非ラノベレーベル”を意識した新レーベル、「メディアワークス文庫」が創刊された。


2010年6月、第16回電撃小説大賞最終選考作として刊行された『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』に盗作の指摘がなされ、絶版・回収措置が取られるという不祥事が起き、全国紙でも報道された。

――以上

(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%92%83%E6%96%87%E5%BA%AB)


 まあ、分かってはいましたが凄いですね。(小並感)



 この中でも注目したいのが、『「電撃の」として単行本(ハードカバー)の形態で出版されるものもあり、そちらは普段ライトノベルをを狙って発売されている』という文章。

 そして、姉妹文庫である”メディアワークス文庫”です。


 コンテストの要項にも『電撃文庫編集部は新文芸に挑戦します』と書かれていますし、電撃文庫に対するメディアワークス文庫のポジションは参考になるのではないかと考えました。

 

 メディアワークス文庫は「ラノベレーベル」を掲げており、「『電撃文庫』を読んで成長していった方、そしてこの先もずっと面白い小説を読み続けたいと思う大人の方に向けて」(角川通信第59期第3四半期報告書 2013冬号 vol.33より, http://ir.kadokawa.co.jp/ir/houkoku/593/01.php)生まれたようです。

 

 ここで、上記の報告書に載っていた内容が参考になりそうなので引用したいと思います。


――以下引用;メディアワークス文庫に対しての質疑応答

Q.「電撃文庫」との違いは何でしょうか?

A.「電撃文庫」の読者は中学生、高校生が中心ですが、「メディアワークス文庫」は20代、30代が中心読者です。ただし、特定ジャンルの枠にはまらないレーベルを目指している点では同じです。「電撃文庫」のなかにも、一般文芸の読者に面白いと思っていただける作品はたくさんあります。ジャンルや作家のすみ分けなどは編集部で特別に意識はしていません。


Q.「メディアワークス文庫」にはどんな特徴がありますか?

A.「メディアワークス文庫」でしか読めない作家の作品が多いことです。また、通常、文芸作品はまず単行本が刊行され、その後しばらくして文庫化されるケースが多いですが、「メディアワークス文庫」は基本的に書き下ろしの文庫本です。そしてなにより、面白いと思う作品をジャンルにとらわれず、どんどん作っていこうというのが編集部のコンセプトです。


Q.編集部には何人の方がいて、毎月何点くらいの作品を刊行していますか?

A.フリー編集を加えた19人の編集者が「電撃文庫」「メディアワークス文庫」「電撃文庫MAGAZINE」の編集を兼任しており、レーベルごとに編集者を固定していません。この人員で毎月「電撃文庫」の新刊を15~18点、「メディアワークス文庫」の新刊を4~ 5点、隔月刊で「電撃文庫MAGAZINE」を刊行しています。

――以上

(角川通信第59期第3四半期報告書 2013冬号 vol.33より, http://ir.kadokawa.co.jp/ir/houkoku/593/01.php)



 上述した質疑応答から分かる事は電撃文庫との「コンセプトの統一」でしょうか。


 電撃文庫が掲げているコンセプト「面白ければなんでもアリ」。

 しかし、「じゃあ電撃の考える”面白い”って何?」という疑問は、当然皆さん考えてしまう事でしょう。


 その道しるべとも言える編集が文庫を跨いで担当についている点を考えると、編集部の考える「面白い」はある程度統一された方向を向いているのではと予測できます。

 そして、対象年齢の推移と、それに伴う読者の嗜好変化。

 この二点を満たすために電撃文庫から分派したメディアワークス文庫は、正しく電撃文庫にとってと言えます。



 これらの事から、編集部が今回のコンテストで求めているにもそれなりの拘りを見て取れました。


 つまり、WEBという媒体を通した読者は、紙媒体の電撃読者とはだと考えており、それ故に”新文芸”を銘打っているのだと推測できます。

 コンテストより生まれる電撃新文芸レーベルの今後の立ち位置は、メディアワークス文庫と近しいものになるのではないでしょうか。


 しかし、だからと言って「コンテストで求めている作品=メディアワークス文庫に近いもの」とは正直思えません。

 

 何故ならば、現在WEB小説で流行っている作品は、やはりラノベ色を強く感じるような作品が多いためです。

 ”異世界ファンタジー”が根強い現状では、コンテストで、しかも分かりにくい形で、一般文芸に近しい雰囲気の作品を募集しているとは考えづらいです。

 もし一般寄りを欲しているならば、要項にしっかりと明記するでしょう。


 では、今回のコンテストでは具体的にどのような作品を求めているのか。


 私はその答えが『新文芸』という、いやにアピールされている言葉に込められていると考えました。

 これについては下記でも再度触れますが、次回からしっかりと考えていきたいと思います。

 今回は電撃文庫についてもう少し見てみましょう。




 次に電撃小説大賞の受賞傾向を見てみると、他レーベルと比較してもが多く受賞してる点を挙げられます。


 余談ですが、電撃大賞はラノベ新人賞にしては公開している情報量も多く、様々な傾向を分析できるのがありがたいですね。

 ちなみに、本エッセイにて列挙する電撃小説大賞情報はアスキーメディアワークス アーカイブ (http://dengekitaisho.jp/archive/index_24.html)を参照しています。興味がある方は覗いてみるのも良いかもしれません。


 閑話休題。

 

 電撃大賞はラノベ新人賞の中でも最難関と称されていますが、他とは違い一般でも受けそうな作品も多く拾ってくれます。


 例えば、第23回の大賞受賞作でカクヨムでも読む事ができる「86―エイティシックス―」。

 作品の雰囲気もですが、個人的に驚いたのが扱う”テーマ”についてです。


 物語を執筆される皆さまは、自作を書いていく上で「読者に何を伝えたいのか」という”テーマ”を意識する事が多々あると思います。

 この対象は様々ではありますが、エンタメ小説に限って考えてみると、普遍的で読者に共感を得られるような身近なものを取り上げる事が多いのではないでしょうか。

 そういった意味では、”ボーイミーツガール”であったり、”恋愛”であったりをよくラノベで見かける事ができました。


 これに対して、先に挙げた「86―エイティシックス―」のテーマの一つは、なんと”差別”についてです。


 いえ、確かに中高生にとってはある意味身近に感じられるテーマかもしれません。

 けれども、”いじめ”ではなく”差別”を、しかもラノベで扱う。


 これには思わず読んでる最中、「え」と困惑の声を視線と共に本へ投げ掛けてしまうほどでした。

 視線が外れなかったのは、流石、電撃大賞受賞作と言ったところでしょうか。まあ、中盤の雰囲気とは打って変わって読後感は良かったですし、純粋に面白かったのですが。

 また脱線してしまいました、すみません。

 

 つまりは、他のレーベルでは出ないであろう作品も、電撃からなら出ても可笑しくないと思わせるだけの実績と信頼があるのです。


 コンセプトの「面白ければなんでもアリ」に二言はなさそうですね。


 この自由ともとれるコンセプトのおかげかどうかは知りませんが、応募総数は業界トップクラス。

 過去のデータを見てみると、


 第22回電撃大賞 4580作品 

 第23回電撃大賞 4878作品

 第24回電撃大賞 5088作品

 第25回電撃大賞 4843作品


 これは下読みするのも大変そうです。冗談抜きで。


 では、これに対して受賞した作品数はどのくらいあるのでしょうか。


 第22回電撃大賞 8つ(受賞率0.18%)

 第23回電撃大賞 8つ(受賞率0.16%)

 第24回電撃大賞 7つ(受賞率0.13%)


 最難関と言われるだけありますね。


 しかし、これはあくまで電撃小説大賞の情報ですので、今回のコンテストに直接は関係していないでしょう。


 関係するのは――選考を行う編集部の傾向です。



 電撃小説大賞HPには様々な情報が載っていると先述しましたが、その中でも特に有用だと考えられるのが、「編集者によるワンポイントアドバイス」(http://dengekitaisho.jp/novel_advice.html)の項目です。


 これは実際に選考を行っている(と思われる)電撃文庫編集が、各々の考え方をQ&A方式で回答しているコーナーです。

 ここで引用をすると流石に長すぎるので、気になる方はご自分でHPへ飛んでみてくださいね。参考になる事間違いなしです。


 また他にも、少し古いですが、「『SAO』『禁書』『魔法科』を手がけた電撃文庫編集長・三木一馬が明かす『キラリと光る応募作』の条件とは?」(http://dengekionline.com/elem/000/001/175/1175165/)という記事など、電撃は欲しい作品の輪郭を出来るだけ発信しているように思えました。


 本エッセイを読んで少しでも気になった情報があれば、ご自分でも調べてみる事をお勧めします。



 ――



 さて。

 電撃文庫がどういった編集部か。電撃大賞はどういった作品があったのか。

 そういったイメージがある程度できたでしょうか。


 しかし、いくら主催が電撃文庫だからと言って、応募するのは「《新文芸》スタートアップコンテスト」。このコンテストに向けた作品作りをやはり意識した方が良いのでは。


 そんな考えがチラチラと見えて執筆に今一つ集中できない、なんて人に向けて、次回からは私が気になっている点二つについて言及しようと考えています。


 一つは、「戦力求む」の煽り。

 もう一つは、「新文芸」を前面に押し出している点です。


 先にも引き合いに出しましたが、凄く協調されています。不自然なくらいに。

 つまり、電撃は「新文芸」に対して、明確にから括弧で囲ってまで強調したのではないか。私はそう考えました。


 以上の二点が気になっているポイントになるので、次回からは上記の疑問について私なりの考察を述べていきます。


 それでは、今回はここまでです。

 予想以上に長くなってしまいました、すみません。(汗)

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