第10話 オレンジ

窓際にオレンジの果実を置いて

窓を空に開け放つと

あなたが好きだった香りが

風に吹かれ部屋に満ちて


わたしがそれを抱きしめると

まるで窓際で夕陽を眺めていた

あなたが帰ってきたようでした


窓際に佇みオレンジの皮に

ナイフを入れていくと

傷ついたような気がして

血ではなく涙がひと粒


やがてオレンジがわたしの

腹に収まるころ夕闇が来て

梟がほぅほぅ、とナキました

わたしもほぅほぅ、ナキました


空には星が

オレンジ色のうしかい座

アークトゥルスと言うのでしたね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る