第9話 旅の終わり

求めた土地は地図にはなく

旅に旅を重ねて少年は北の港町に

行き着いた


水平線の先に求める土地はある

しかし少年には船はなく

風も凪いでいた


失意に失意を重ねても

求める心は黒くは染まらない

琥珀の中の一万年前の泡のように


水平線の向こうを眺めながら

少年は漁師になり船に乗り

日々は積み重なり

絆は増えていく


その手の傷も増えて

潮と波風に鍛えられ

旅人の季節は終わり


少年は大人になっていった


そのとき風が吹き始めた

いつか求めた風が

必然のようにそちらへと流れていく

雲と波と船を運ぶ


求めた場所は地図にはなく

けれど彼は辿り着いていた

船は港町に帰り着く

彼の家族がいる場所

地図にはない楽園へ


水平線の彼方への夢は

琥珀の中の一万年前の泡

それは小さな手に

受け継がれていく


そしてまたひとつの楽園が

産まれるのだ

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