第15話 常連客と学生が増えてきました

 ワンコインメニューの評判がいいようです。


特に大きないなり寿司はインパクトがあったようで、学校帰りの学生さんのグループがよく来てくださるようになりました。

どうも期末テストの帰り道に食べてから、味をしめてくださったようです。

某ハンバーガーが高くなったのにも原因があるのかもしれませんね。


そんな学生さんたちから、夕方、部活帰りに寄った時にもいなり寿司が食べたいというご要望がありました。

それを受けて、ランチを二時までにしていましたが、いなり寿司だけは多めに作っておいて、時間外でも残っていたら出すということになりました。


ありがたいことです。



他にも常連さんができました。


塾講師の和馬かずまさんは、ほぼ毎日のようにランチに来てくださいます。

料理の感想をいつも葉月さんにメールしてくれているみたいですよ。


子どもさんが四人いると仰った松尾さんはPTAの会合に「おばあちゃんち」を利用してくれます。そのため二階を片付けて、団体用の部屋に改装しました。

大勢のお母さん方が手芸品や絵も買ってくださるので、最近、弥生さんは子供服まで作っています。



弥生さんと言えば「木曜日の人」といい雰囲気になっているようです。

最初は毎週木曜日ににだけやって来る謎の青年だったのですが、二軒先の田辺のおばさんの話では、近所にある歯医者さんの長男さんらしいです。

そういえば歯医者さんは木曜日が休診でしたね。


工務店の達也たつやさんはお休みの日に睦月さんと一緒に店の模様替えをしてくれています。

遊びなので支払いはいらないということですが、大丈夫なんでしょうか?



「ねぇ、お店をして良かったわね。」


そこそこの利益が出るようになった頃、弥生さんが妹たちに言いました。


「そうだねー。仕事と利益が直結してるから面白いわ。工夫したところをお客さんがすぐに気づいてくれるしね。」


睦月さんがメニューブックにイラストを描き足しながら応えます。


明日の仕込みをしていた葉月さんも頷きました。


「それ言えてる。誠実に美味しいものを提供したら、わかってくれるよね。でもジャンボいなりがあそこまでウケるとは思わなかったな。」


「葉月が店のコンセプトを昭和のおばあちゃんの家に設定したのが良かったのよ。他ではなかなか食べられないもの。」


歯医者の雅人まさとさんもあの大きないなり寿司がお気に入りです。

千五百円の定食を食べた後に、いなり寿司を買って帰るんですからね。

弥生さんに持ち帰りはできますか?と恥ずかしそうに聞いた時のことを思い出します。



今日も三人の姉妹は菜園で、お店で、楽しく忙しく過ごしています。


駅の近くにある「おばあちゃんち」皆さんもちょっと覗いてみませんか?

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見上げる樹々に飾る星 秋野 木星 @moku65

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