第10話 応接間を手芸品売り場にしましょうか

 妹尾工務店の皆さんが六人がかりで台所やお風呂を壊してくれました。


とうとう大きな改装工事の始まりです。


古いシステムキッチンはそのまま使うつもりだったのですが、業務用の中古のシンクに付け替えるのにそんなに手間はいらないと言われたので、もう全部お任せすることにしました。


大勢で取り壊した後は、息子さんの達也さんが一人で毎日やって来てはコツコツと細かいところを改装してくれています。

どうもここの現場の親方は達也さんのようです。


そんな達也さんののこぎりの音を聞きながら、三人姉妹は応接間に立っていました。

おばあちゃんの家の北東の角部屋が八畳の応接間になっているのです。


「ここの出口の側に会計が出来る机を置いたらどうかしら。」

「そうね。でも邪魔になるから小さい机の方がいいんじゃない?」


「おばあちゃんの鏡台の鏡を外せばいいじゃない。」

「葉月、ナイス! 私、上にのせる板を買ってくるわ。」


「ちょっと待って、睦月。他の所も決めてしまってから、一度に買い物に行きましょうよ。」

「ほぉーい。」


東側と北側に窓があるので、その採光を邪魔しないように棚を置くことにしました。


「小屋に持って行った本棚をここに置くでしょ。それから二階の部屋から本棚を持って降りて、間に飾り棚を置いたらいいわね。」


「でもっちゃん、全部、色や種類が違うよ。ごちゃつかないかな。」


「それはシートを張ってみるよ。最近はすぐ張れるシールみたいなシートが出てるから。」


「じゃあそれも買わないとね。こっちの壁は開けといて、睦月の絵を飾ったらどうかと思ってるの。それの取り付け金具も買いましょう。」



「店が『おばあちゃんち』だから、今、昭和の風景も描いてるのよ。」


「睦月、季節の小品もいくつか書いてよ。百均の額でいいから。」


弥生さんには何か考えがあるようです。


「うん、いいよ。」


「私も季節ごとの手芸品を置こうと思ってるの。そういうのってインテリアに凝ってる人や模様替えが好きな人が買ってくれるかもしれないし。」


なるほど、考えましたね。



「じゃあ、コーナーを作ればいいじゃない。」


「そうだね、葉月。あんたはアイデアマンじゃないの。」


「へへっ。」


三人で力を合わせて本棚を運び込んで、だいたいの様相を整えました。


これで商品が並ぶと……なんだかワクワクしてきますね。






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