第4話 女性型

「あのさ、ウミノさんって、その、アンドロイドなの?」

そう僕が聞くとウミノは答えた。

「ウン! そうだよー。 私、アンドロイドだから子供産めないんだよ。」


後から調べたがアンドロイドは生殖機能を制限されているそうだ。

男性型も女性型もアンドロイドは子孫を残すことができない。

アンドロイドは生産時にヒト細胞を制御して生殖機能を無くしている。

技術的にあえて機能を制限したのはなぜか?

もしアンドロイド同士で子供を産むと際限なく増えてしまう。

闇業者が二代目、三代目を売るために増やしてしまう。

そのうち地上はアンドロイドだらけになってしまうだろう。

人間とアンドロイドが子孫を残すとどうなるか?

アンドロイドの遺伝子は幅がせまい。

だから人間界の遺伝子の多様性に悪影響がある。

イメージとしては紳士服売り場のスーツだ。

アンドロイドの遺伝子は既製品の良く出来たスーツ。

人間の遺伝子はその他すべての服に例えられる。

短パン、カーディガン、和服。

人間の中にはファッションショーに出るような素晴らしい遺伝子もある。

その逆にボロ布のようなワイルド遺伝子もある。

しかしその多様性が厳しい環境を生き抜いた証拠である。

そして同じ型のアンドロイドが何万人もの人間の子供を残すことはリスクがある。

近親婚のような状態が偶然できてしまう。


「ウン! そうだよー。 私、アンドロイドだから子供産めないんだよ。」

この想定外のウミノの答えに戸惑った僕は言葉につまった。

返す言葉がない。

しかし声をかけたのは僕の方だ。

このまま無言というわけにはいかない。

女子高生の美少女が子供が産めないとカミングアウトしてきたのだから。

何とか彼女をフォローしなければ。

とにかく何か言葉を返さなければ。

彼女を傷つけぬように。

返事をしなければ。


「へえ。ウミノさん、産めないんだ。 良いネ。」


僕は馬鹿なんだろう。







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