第3話 赤いレインコート

今日のウミノは赤いレインコートを上に着ていた。

教室で彼女は他の女子としゃべっている。

ウミノは体を前に乗り出してグイグイ顔を近づけて話をしている。


美少女のウミノがアンドロイドだという話をヨシダから聞いて気になっていた。

別に彼女がアンドロイドだから、どうという話ではないのだけれど。

他の女子と扱いに差をつけるとか、そういう考えも僕にはない。

しかしなあ。

アンドロイドは厳密には人間ではない。

法的に人間扱いされてはいない。

とはいえアンドロイドの体は制御されたヒト細胞でできている。

だから肉体は人間とほぼ同じであると言える。

でも脳の代わりに人工知能のチップが入っているからヒトではない。


ヨシダの話ではウミノは愛玩用のアンドロイドだそうだ。

愛玩用タイプは子供のいない夫婦が実子の代わりに購入して育てるのが一般的だ。

法的に人間では無いアンドロイドは親族関係などに影響しない。

だから資産家の夫婦はアンドロイドの子供を持つことがある。


午後の授業の5分休憩中にウミノが僕の後ろの席に来た。

彼女は後ろの女子としゃべりに来たようだが手持ち無沙汰にしていた。

何か僕が話しかけなければならないような雰囲気だ。

「あのさ、ウミノさんって、その、アンドロイドなの?」

やっちまった。

クチから意識せずに言葉が出てしまった。

他に話題もないから最近の疑問をストレートに。

もっとオブラートに包む言い方があったはずだ。

いや。

そもそも僕はウミノと、ほとんどしゃべっていないのに。


ウミノが顔を近づけてきた。



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