そして

「マジかっ? マジかっ!」

「うん!」

 オレは今、

「ヨッシャアアアアアッ!」

「ダイッ、セェェェェェコォォォォォッ!」

 兄ちゃんと一緒に喜びを噛み締めている。

「兄ちゃん、ありがとう! 本当にありがとう!」

「良かったな! せっかく好きな子と付き合うことになったんだ。幸せにな!」

「あぁ~最初は怖かったけど、惚れ薬を渡されたとき……すごく嬉しかったよ」

「惚れ薬と言っても、本当はただのリンゴジュースだけどな。それにしても……よくうまくいったよな~、この作戦」

 なかなか告白ができないヘタレなオレのために兄ちゃんが考えてくれたのが、惚れ薬作戦だった。

 あの子に惚れ薬という名のリンゴジュースを渡し、それをあの子が誰に飲ませるのか。あの子がオレに飲ませたら、オレは告白しようと兄ちゃんと約束したのだった。

「未だに惚れ薬を信じているなんて、あの子なかなかの天然だろ」

「そこがかわいいんだよ、あの子は!」

「まあ確かにかわいい子だけど」

「あと、兄ちゃんが元々おじさんだかおばさんだか分からないような見た目だから成功したっていうのもあるね」

「そこは迫真の演技だった、とでも言え!」

 オレの恋は、兄ちゃんのお陰で実ったのだった。




 あれから数年後。

「ねぇ。あのとき私があげたリンゴジュース、実はね……」

 ギクッ。

 まさか、今になってこの話題が出てくるとは……。

 オレはあのときの真実を、愛しのマイハニーに言っていない。

「惚れ薬だったんだよね……」

「ええーっ!」

 あ、今のリアクション、嘘っぽかったかな……。

「黙っていて、ごめんね」

 セーフ!

「良いって! 気にすんな!」

 そうそう。こうして今、オレは君と共に幸せな日々を送れているんだからな!

「結局、あなたが飲んでも効果がなかったんだよねー」

「あ、あぁ~……」

 それは……あれだよ……。ちょっとカッコつけて、駆け引きってもんをしたかっただけなんだよ……。

「でもね! その理由が最近になって、やっと分かったの!」

「へ?」

 彼女からの意外な言葉に、オレはついマヌケな声を出してしまった。

「だってあなたに惚れ薬を飲ませたって、飲ませる前から私のことを好きになってくれていたんだから……そりゃ効果ないでしょ!」

 飛びっきりの笑顔でそう言われたオレは、ますます本当のことを言い出せなくなってしまった。

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惚れ薬と私、そして 卯野ましろ @unm46

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