第7話

さーて、初めての冒険です!

行きましょう、イナリちゃん!


「コンッ!」


そう一声鳴くとイナリちゃんは、トトトと私の体を登り右肩に留りました。

どうやらここを定位置にしてくれるようです。


「無理すんじゃねーぞ!

初めてなんだからな、今日中に帰って来んだぞ。」

「はい、そうします。じゃっ!」


ロッソさんに村のはずれまで見送ってもらい出発です。

てか、ロッソさん、まるでオカンみたいですね。


―さて、八百屋のお婆さんに教えてもらった北の斜面に向かうわけですが、村を出てから1kmくらいはずーと野菜畑です。


季節は初夏って感じで少し暑いくらいですが、青い空に白い雲、爽やかな風が吹いて、いや実に心地いいです。

そこにずっと緑が続く畑の光景は、本当にノンビリとしたものです。


私が初めて来たスタートポータルが村の南側で、そこは一面の麦畑だったのですが、こちらは色んな野菜が青々と植えられていました。

キュウリっぽいのやピーマンもどきな地球で見たことのあるヤツもあれば、星形のウリっぽいヤツやピンク色した真ん丸いヤツなど、ファンタジックなお野菜も一杯生っております。


「おっ?にーちゃんか!これでも食ってけ!」


途中、畑仕事をしていたお爺さんから、紫色のズッキーニというか細長いナスビみたいな野菜を頂きました。

このお爺さん、私が野盗と間違えられた時、鍬で私を威嚇していた人達のひとりです。


どうやらあの時のお詫びってことですかね。

まだ私の容姿に少しビビってるようですが、声を掛けてくれるだけでも有り難いものです。


「どこ行くんだい?」

「えっと、北の斜面で薬草を採取しに行くつもりです。」

「ああ、あそこンなら、今ならよく採れるだろうさ。

モンスターのヤツも、あそこン辺りじゃあまだ出て来ねえしな。」

「そうですか。」


お爺さん、それ、そこはかとなくモンスターが出ちゃうフラグっぽいのですが。


まあ良いでしょう。

出たら出たで、倒せば私とイナリちゃんの経験値になりますからね。


「気ぃつけることにゃあ、越したことはねえさ。

危ねえと思ったら、すぐ逃げるこった!」

「はい。」


お爺さんから忠告をもらい、その場を離れました。

いやーやはりこの村の人達はいい人ばかりみたいですね。

最初はどうかと思いましたが、この村をスタートポータルにして良かったです。


ちなみに頂いた紫ズッキーニですが、噛るともの凄く水気たっぷりで素朴な甘さのあるものでした。

イナリちゃんにも半分に折って食べさせてあげましたが、気に入ったようで必死にポリポリ食べる姿が可愛かったです。


さて、しばらく真っ直ぐな道を歩くと畑が途切れ、その先は林になっていました。

道はその林…というか、里山みたいなものですかね、そこの奥へ続いています。


ここでタレントの[発見]、[採取(植物)]、[魔力感知]を発動させます。


タレントは、タレント枠内に設置しておけば常に発動するタイプと、発動を念じなければ発動しないタイプがあります。

先に発動したのは、三つとも後者のほうですね。


[発見]は、自分の知識として知っている物があれば、カーソルが現れ所在を報せてくれるタレントです。

知識として知っておかねばなりませんが、知っていれば隠れている物までカーソルで報せてくれる、冒険者必須のタレントです。


[採取(植物)]は、植物を採取するときにアシストしてくれるタレントです。

採取植物の位置を報せるといった、[発見]とカブる所がありますが、それ以外にも知識として知らない植物でも報せてくれたりもします。

また植物限定の鑑定能力や、採取時に難度設定がある植物を採る場合のサポートもしたりと、これまた使えるタレントです。


とはいえ、レベルが上がらないと大した事はできないのですがね。


最後の[魔力感知]ですが、これはまんま魔力を感知できる能力です。

魔力があるモノを見ると、うっすらとオーラの様なものが見えるようになります。

あと魔法を使うにも、このタレントを有していないと上手くつかえないそうなので習得しています。


こういったタレントは、発動しておかないと経験値が貯まりませんからね、できる限り常に発動状態にしておく必要があります。

ですが発動できるのは同時に5つまでです。

これもまた注意しておかなければいけません。


さて、タレントを発動してみますと…おおー、木々の間や茂みとかから幾つかの三角マークが現れました。


ちょっと一番近くにあったカーソルの所へ行ってみます。

カーソルの下にあったのは、背丈が30cm位の低木でした。


【シカミグサ】

:一般的に茎や葉を歯みがきに使う。

全草部分に殺菌効果(微)あり。

別名『ハブラシの木』。


ナイフを使って"採取"すると、【ハブラシの枝】と【ハミガキの葉】が3つづつ手に入りました。

試しにその【ハミガキの葉】を1枚噛んでみます。

…ほほう、噛んでみると、ミントの様な味覚と共に口の中がスッキリした感じがしました。


「コン?」

「うん?イナリちゃんも噛ってみますか?」

「コンッ!」


イナリちゃんにも1枚葉を差し出してあげます。


「コンッ?!ケフッ!ケフッ!」

あらら、ミントの味は苦手だったみたいです。

一噛みしただけでむせてしまい、ぺぺぺと吐き出して涙目になってます。

あああ、ごめんなさい、でもそんな姿も可愛いよお。


…でもこれでタレントも問題ないようです。


それでは改めて目的地に向かいましょう。

この辺りのカーソルで示されている物は、村人さん達でもすぐ手に入るものばかりでしょうからね。

リュックだって有限なんですから、付加価値の高い物を狙っていきましょう。


というわけで、獣道っぽい道をズンズン進んで行きます。

道は、時おり丘や窪地を避ける以外はほぼ真っ直ぐで、木々もそれほど繁っている訳でもなく、障害らしい障害はありません。

それどころか、適度な木陰の中を歩いてるもんですから、快適と言ってもいいでしょう。


「コン♪コンッ♪」


イナリちゃんも【ハミガキの葉】から立ち直って、今はゴキゲンさんです。

木々の上から聞こえてくる、鳥達のさえずりに合わせてコンコン言ってます。

私の耳元でっ!私の頬をスリスリしてくれながらっ!


……もう今日はお仕事を止めて、ここでイナリちゃんを愛でるというのはどうでしょうか?


ですが、そう(半ば本気で)考えていた所で、残念ながら目的地に到着してしまったようです。


突如、平坦な地面が終わりまして、私の目の前にけっこう急な斜面が現れました。


…なるほど、確かにいろいろ収穫できそうです。


斜面には、今までにない数のカーソルが現れていました。

…ですがね。


その斜面の中腹辺りに、一匹の大鹿がおりました。

鹿はカーソルが付いた辺りの草をモッシャモッシャと食んでいましたが、私の姿を見付けるとじっとこちらを見下ろしています。


あ、これヤバいです。

完全に目が合ってしまいました…。


スタップディアー/土属性/幻獣族

Lv 5 ★★



───────────────


サンタ(土属性・ヒト族)

ジョブ:

[ビーストマスター] ★★★ Lv 1/10

[アルケミスト] ★ Lv 1/10

タレント:

[発見] Lv 1/10

[採取(植物)] Lv 1/10

[魔法(土)] Lv 1/10

[魔力感知] Lv 1/10

[魔力操作] Lv 1/10


控えジョブ:

なし

控えタレント:

なし


未収得タレント:

なし


残りタレントpt : 50



ヨウコ(妖狐)/土属性/魔獣族

Lv 1 ★★★

タレント:

[狐火] Lv1/10

[惑わし] Lv1/10

[危険察知] Lv1/10

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る