第5話

あああああ…。

なんて愛らしい…。


「コン…、コンコン!」


ほわあっ?!

触ってもいいのですかっ?!


「コンッ!」


ああああ…ふさふさですぅ。

ええっ?!ペロペロって…ペロペロスリスリしてくれるんですかっ?

わ、私が怖くないんですか?

無理しなくていいんですよ?

使い魔だからって、好き嫌いは自由だと思うんです。

だから私は、なるべく自主性を重んじた…え?

そんなこと無い、大好きですってぇっ?!

……

…………嗚呼、我が人生に悔い無しっ!




「……い。…おい、……こらっ!おいっ!」

「ふぎゃっ!痛いっ?!」


いきなり後頭部を殴られました!

振り返りますますと、なんだかプンプンされてるロッソさんがいます。


「痛いなあもう、何するんですか!」

「バッカ野郎!そのキツネッコ召喚してから、幾ら呼掛けても返事もしなかったからじゃねえか!」

「え、ええー?

ロッソさんの声なんか、聞こえませんでしたよー?」

「はあ…、かれこれ30分は気持ち悪りぃ顔しながら、そいつとじゃれあってだぜ?

こっちは大声だして呼掛けんてんのに、全く無視されてよお。」


うわー…、余りの嬉しさにちょっとトリップしていたみたいです。

そりゃロッソさんも激オコになっちゃうはずですね。

ですので、そのあとしっかりとロッソさんに謝りました。


「…で、そのキツネッコがお前さんの使い魔って訳か。

ずいぶん可愛らしいのじゃねえか。」

「ですよねっー!!やはり可愛いですよねっー!!」

「うおっ?近い、近ぇって!」


おっと、このコが可愛いと呼ばれて、おもわず前のめりになってしまったようです。

でも可愛いから仕方ないですよねっ?


「…たくよお、とんだ飼主バカだぜ…。

にしてもやはり初めて見る奴だな?

良かったら、何てえ名の奴かだけでも教えてくんねえか?」

「ええ、もちろん良いですよ。

妖狐っていう、えーと…私のいた国の妖か…モンスターっていいますか、そんな感じのです。

あ、あとこのコ、こちらでは初めて現れたみたいですね。」


ジョブやタレント、そしてモンスターなんかの名称に、『New!』の文字が出ますと、それはこのファンタージェンワールド中で初出場であること示しています。


つまりこの世界で初めて『妖狐』というモンスターで現れた、第一号がこのコということになります。


そう言うと何だが凄いことのようですが、このRFWでは現在でも月イチぐらいのペースでなんらかの新発見が報告されています。

オマケに発見しても世に発表しない人もいますからね、実際はもっと新発見があると言われているんですよ。


ゲームがスタートして20年以上経ってるのにこのペースですからね、今までのジョブやタレント、モンスターなんかの種類はスッゴい数になってます。


てな訳でまあこのコも、ちょっと珍しい程度でしょうか。


そういや日本なんかのアジアが由来のモンスターって、今までRFWでは聞いたことありませんでした。


もしかしたら、これからそういった東洋オシの新ジョブやモンスターが現れてくるかもしれませんね。

例えばサムラーイとか、ニンジャとか(笑)。


「ふぅーん、初モノたあ縁起がいいじゃねえか。

やはりここを紹介してやった甲斐があったってもんだな!」


ロッソさん、なんだか嬉しそうです。

この大岩が役に立ったのが嬉しいのか、自分が紹介して珍しいコが出てきたからか、といったところでしょうか。

まあ、でも偶然だとは思うんですけどね。


あ、でも、そういやこのコを召喚した時、この大岩が一瞬輝いたように見えたんですけど…。


「あん?鎮守岩が光った?

いや、俺は一部始終見てたけど、岩はなんも変わらなかったぞ?」


…あら?そうでしたか。

うーん、光った様に見えたんだけどなー。

召喚陣の光りが岩に反射したんだろうか?


「ま、いいじゃねえか!

鎮守岩が、なんかお導きしてもらったとおもえばよ!」


うん、まあそうしておきますか!


「それより、コイツにそろそろ名前を付けてやったらどうだい。」

「ああっ!そうでしたっ!」


なんという失態!

こんな可愛いコをおっぽって、ハゲたおっさんとの会話なんかにかまけてたなんて!


「…コン?」


くはっ?!やはり可愛いっ!

なになに、って首を傾げるその姿の愛らしいこと!

これは気合いをいれて、名前をつけてあげなければ。


このコのビジュアルは、よくマンガでも出てきそうなちょっとデフォルメした子ギツネさんな姿をしています。

大きさは胴体だけでボーリング大くらい。


で、自分の身体と同じくらい大きくてフッサフッサの尾っぽが4つ有ります。

その尾の先だけが、墨を付けた筆みたいに黒いんです。


妖狐ってことで、尾っぽが4つ。


これ、ランクアップしていったら尾が増えていって、最終『九尾の狐』になるパターンではないでしょうか?


むむむ…とすれば、玉藻前伝説から『タマモ』ちゃんとか…。

あとはお狐さんで『コックリ』ちゃんとか…。

うーん、でもちょっとその辺って、あまり良いイメージじゃ無いんですよねー、個人的に。


あっ!善い方なら、神様の使いとしてのお狐様があるじゃないですか!

『イナリ』…、うん!お稲荷さんで『イナリ』ちゃん!

いいじゃないですか!


「決まりましたっ!

君の名前は『イナリ』ちゃんでどうでしょうか?」

「コン?…コンコンコンッ!」


おおっ!気に入ってくれましたか!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る