神隠し

「また起きてるの?神隠し。最近多いねー。ウチもそろそろ攫われ時かなぁ…」

幼馴染みの鈴音りんねが、ビルの壁に取り付けられてる大型テレビから流れているニュースを見ながらボソっと言った。あたしはぼんやりと眺めていたから、生返事をした。

「そだねー…」

そのあと、謎の静寂が訪れた。

「…未来、それ、そこで使う?なんか不謹慎じゃない?あと、鈴音が可愛そう。泣いてるよ?」

ツッコミを入れてくるのは、クラスメートの優羽ゆう

「"そだねー"のこと?あ、そういうこと?それなら全然意識してなかった。リン、当然あたしのこと許すよね?

許さないとかいう選択肢無いからな?」

「そだねー。無いねー。許さないとか言ったら後でどうなるかわかんないしねー。おお怖い怖い」

ちなみに、あたしは鈴音のことを、リンと呼んでいる。え、理由?知りたい?


何を隠そう、彼女の名前は鈴音鈴音すずおと りんねだから。


リンのお母さんがド天然らしくて、苗字が鈴音なのを忘れてつけてしまったらしい。本人は、『周りがすぐに覚えてくれるから楽だよ?読み間違えされまくるけどね!』って感じで不満はないらしい。


話を戻すけど、あたしの住んでる地域では最近神隠し…正確に言えば誘拐だけど、それが起きてる。1歳にもならない子どもから大人、さらには高齢者までも巻き込まれている。警察が血眼で探しているにも関わらず、被害者はもちろん、犯人に関しての情報も分からないままだった。


不思議なことは、それだけじゃなかった。

それは、あたしの眼に映る人形全てが幸せな顔じゃないこと。

家にある人形が怖い顔をしていたのは、あたしがまだ小さい時からずっとそうだけど、最近じゃあ、家にある人形だけじゃなく、お店のショーウィンドウにある人形までもが、恐怖に顔を滲ませていた。でも、友達にも、ママにもそうは見えていない。

あたしの眼がおかしいのかと思って病院に行ってみても、視力は両目ともA、色覚に異常はないし、脳にも異常は無かった。

人形を触ってみても、なにも起こらないし、人形供養をやっている寺に聞いてみても、家にある人形には邪気は全くなかったらしい。

「来、未来ー…?聞いてる?」

優羽に声をかけられ、一瞬びっくりした。

「あー、うん。なんの話?全く聞いてなかった!」

「いつもの事だ。問題無い」

「いや、あるでしょ」

これがいつもの風景だけど、こうやって馬鹿やるのは楽しいから好き。



でも、それは長くは続かなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る