第20話

私にとってのレイラさん。

「それなら、シロにとってのレイラさんって何なの?」

かつて告白を受けた親友から言われた一言。

小さい頃から仲のいい友達はいても、かけがえの無い存在はいなかった。

「シロちゃんおかえり!」

この言葉を聞くと、1日の疲れが飛んでいく。

「このグループの歌好きなんだけど、リーダーが猫かぶってるのが気に入らないわ」

たまに毒を吐く、そんな姿に呆れながらもつい気になってしまう私がいる。

「締め切り厳しすぎんのよ・・・あの編集〇す」

小説のことをばらさないようにと我慢していたお酒を飲めば毒を吐きながらも作品を生き生きと話している。

(私は・・・レイラさんを大事な存在にしたい)


「それで?放課後に私たちを呼び出してどうしたの?」

「シロから呼び出しなんて珍しいな」

野球部の掛け声が校庭に響く中、私は教室にアカリと片桐くんを呼び出した。

「いきなり呼び出してごめんね」

「俺はべ、別に構わないぞ」

「うわー雑なツンデレ・・・。そんなことよりも、私たちに何か相談でもあるんでしょ?」

アカリも片桐くんもこっちを向いた。

「・・・特別な存在ってどういうものなのかな、って・・・」

「「え?」」

それからしばらく2人がフリーズしてしまった。

「アカリ?それに片桐くんもどうしたの?」

「・・・ああ、ごめんシロ。それってレイラさんの事だよね?」

「レイラさんって文化祭の時の、女の人?」

「最近もっとレイラさんと仲良くなりたくて・・・でもよく分かんないんだ」

距離感がうまく掴めない、そんなところだ。

「それでアカリと、それから大事に思える人がいる片桐くんに相談したの」

「仲良くなりたいって、よく昔振った女に言えるわね・・・」

「えっ!?アカリとシロってそういう関係だったんだ・・・」

「ごめんアカリ、自分勝手なのはわかってる。でもだからこそわかって欲しかったから」

アカリは少し呆れながらもいつもの笑顔に戻った。

「でもレイラさんともっと仲良くなりたいって、具体的にどうしたいの?友達になりたいの?それとも付き合いたいの?」

「付き合いたいわけじゃないの。でも友達っていうのは近いかも」

でも友達じゃ特別な存在にはならない。

「割り込んで悪いんだが、シロはレイラさんを特別な存在にしたいんだよな?」

「うん。どんな形でも大事にしたい」

何故か片桐くんは頭を少し抱えたが、話しをしてくれた。

「俺はさ、関係自体は何でもいいと思うんだ」

「どういうこと?」

「俺は好きな人がいて今すごく幸せなんだ。これは俺の勝手な考えだが、その人と恋人になれなくても幸せはあると思ってるんだ」

「珍しく片桐がいいこと言ったね。私もシロとこうして会話できるだけでも幸せだよ」

(2人ともそれでも幸せなんだ・・・)

「ありがとうアカリ、片桐くん。私、もう一回考えてみるね」

「うん、頑張ってね」

シロはそう言って教室を出ていった。

「・・・実らないね、2人とも」

「かといって諦められないから」

「恋のライバル2人で好きな人の相談受けるなんてね」

「まあ、それでシロが幸せなら・・・」

「片桐は嘘が下手くそになったね」

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