第21話

「レイラさん!」

私はただいまを言わず、レイラさんの部屋へと駆け込んだ。

「どうしたの?そんなに慌てて」

「えっと・・・そのなんて言うか・・・」

(どうしよ・・・なんにも出てこない)

もっとレイラさんと仲良くなりたい、そんなことは言えなかった。

「それよりも今日は私がご飯作る日だから!」

(そういえばそうだったっけかな)

「今日は何を作ったんですか?」

「聞いて驚かないでよ?なんと!肉じゃがを作りました!」

(普通だ・・・)

最近、私の肉じゃが作りを真剣に見ていたのはこの為だったのか。

「ただの肉じゃがではないよね?」

「はい?」

まさかの疑問を投げかけられ、私はつい黙ってしまった。

「もうっ、シロちゃんは忘れっぽいね。それなら、今日はなんの日でしょうか?」

(今日はいつもの平日だと思うんだけど・・・)

「わかりましたよ。去年のこの日はレイラさんが苦手だったアスパラガスを食べた日ですよね?」

あの日は、初めてレイラさんがアスパラガスを吐き出さず、飲み込んだのだ。

「あの時は本当に頑張りましたね」

「確かに食べたけど!もうっ!本当はわかってるんでしょ?」

(やばい、わかんない・・・)

レイラさん、記念日、肉じゃが・・・

「あっ、私とレイラさんが出会った日」

「大正解だよっ!」

一昨年のこの日、私が午前授業で午後にコンビニに向かう途中で、初めてレイラさんに会ったんだった。

「だから肉じゃがだったんですね」

「だから今日は私が作ったので食べてください」

私は手を洗い、制服の上着を脱ぐと席についた。

「「いただきます」」

私は早速肉じゃがに手をつけた。

「・・・!」

その瞬間、私にそこそこの衝撃が走った。

「どうかな?美味しいかな?」

レイラさんが緊張した面持ちでこちらを見てきた。

「・・・美味しいです」

めちゃくちゃ美味しかった。

肉の食感を損なわずジャガイモを引き立たせる、まさに肉じゃがの完成系に近かった。

「・・・・・・」

するとレイラさんは黙ってしまった。

「れ、レイラさん?どうしたんですか?」

レイラさんは唇を震わせながら言った。

「は、初めてシロちゃんが美味しいって言ってくれた・・・」

「初めてでしたっけ?」

「初めてだよ!いっつもシロちゃんああだこうだ言うじゃん!」

でも今回は素直に美味しかった。

「私だって成長するんだよ。私だっていつまでもシロちゃんに甘えていられないからね」

レイラさんも成長している、出会って2年でもこんなに思えた。

(私も、少しでも・・・)

「レイラさん」

「どうしたの?」

「私・・・レイラさんの事が好きなのかも知れません」

「えっ?」

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