第16話

(あ・・やばい少し寝てた・・)

時刻は既に11時を回っていた。

少し懐かしい夢を見ていたのを覚えている。

「・・・きっとレイラさんもこんな気持ちだったのかな」

寂しい。いつもそこにいる人、いて欲しい人がいない寂しさ。

「レイラさん、早く帰って来ないかな・・・」

するとこの部屋のインターホンが鳴った。

「はっ、はーい」

(出ちゃってもいいのかな・・・?)

そんなことを思いながらも私はドアを開けた。

「どちら様・・・って!レイラさん」

「えへへ、ごめんね。帰ってきたよ」

そこには疲れ果てぐったりしているレイラさんがいた。

「ごめんごめん。鍵が出てこなくて、まさか居るとも思ってなかったけど」

そこにはいつもの屈託のない笑顔を浮かべたその人物がいた。

「・・し・・・心配したんですから!」

「ええっ!実家に帰ってただけなんですけど・・・」

「とにかく・・・心配したんですから・・・」

「予定より少しかかったからね。・・・心配してくれてありがと」

今にでも泣き出しそうになっている私はをレイラさんは静かに抱きしめてくれた。

「そんなに私のこと大事に思っていてくれてありがとう」

「大好きレイラさん」

「今日は気持ち悪いくらい優しいね・・・」

「レイラさんは静かに私を抱きしめていればいいんですよ!」

「どうして私が怒られているんだろ・・・」

私が泣き止んだのを、確認するとレイラさんは提案をしてきた。

「お詫びと言ったらなんだけど、明日から2人で旅行でも行かない?お金は私が出すから」

「旅行に行くのはいいですけど、お金まで出してもらうのは悪いですよ」

「いいのいいの。作品に最近重版がかかったから。それにそれでシロちゃんが許してくれるなら」

少しだけ迷ったが、今回だけは甘えてみることにした。

「それじゃあ、早速行こうか!」

「今からですか!?」


「一体どこに行くつもりなんですか?」

私たちは夜行バスを使い、船に乗り、気がつくと四国まで来てしまっていた。

「香川だよ」

「香川まで来て、見たいものがあったんですか?」

「そうだよ。シロちゃんとずっと来たかったの」

いつも以上にウキウキしたレイラさんだったが、空腹には勝てなかった。

「・・・お昼にしましょうか」

「・・・そうだね。シロちゃん何食べたい?」

「せっかく香川まで来たので、本場の讃岐うどんが食べたいです」

「香川といったらうどんだよね!」

お互いに香川のイメージが貧困だった。

近くで少し有名らしいうどん店に入り、さっそく本場の味を頂くことにした。

「「いただきます」」

麺はコシがしっかりしていて、普段作るうどんとは全くの別ものだった。

「美味しいね!やっぱり本場は違うのかな」

「これじゃあレイラさんが私のうどんで満足してくれなくなる・・・」

私は席を立ち上がった。

「ちょっとシロちゃん!弟子入りしないで!」

そんなこともありながら、三時ごろにはレイラさんが行きたかった場所に来ることが出来た。

「ここがレイラさんが行きたかった場所ですか?」

そこにあったのは、島と島を繋ぐ1本の道でした。

「ここはねエンジェルロードっていって干潮の時にしか見れないちょっぴりレアな場所なんだよ」

「どうしてそこまでここにこだわったんですか?」

待ってましたと言わんばかりにレイラさんがこっちを向いた。

「ここはね、大事な人と渡ると願い事が叶うって言われているんだ」

(大事な人・・・)

「そういうのってカップルがするものじゃないんですか?」

「・・・そうだね。私の理解が足りなかったかも」

(あっ、地雷踏んじゃった)

「べっ、別に私はレイラさんとでもいいですよ」

「私はシロちゃんだからいいの!」

そう言って彼女は私の手を握ると道を渡った。

「やっぱり女子2人だと目立ちましたね」

「え!?私まだ女の子で通用する!?」

(レイラさんまだ20代前半じゃないですか)

「ちなみにレイラさんは何をお願いしたんですか?」

「私はね・・・これからもシロちゃんといられますように!ってお願いしたよ」

「口に出すと叶わないらしいですね」

「嘘!?今のなし!忘れて」

「迷信ですから。言った方が叶うって説もあるくらいですから」

私はちなみに・・・言うと叶わないかもなのでやめておきます。



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