第17話

まだシロちゃんが来ていない夕方、私に1本の電話がかかってきた。

「もしもしレイラですけど」

『あっ、もしもしレイラさん?アカリです』

「アカリちゃん?私に電話なんて珍しいね。何か用?」

『それなんですけどね。来週の日曜日がシロの誕生日なのは知ってますよね?』

(知らなかった・・・)

誕生日の話なんてシロちゃんとした事がなかった。

「え、ええ・・知ってるよ」

『それで、シロに誕生日プレゼントを渡したいんですけど。レイラさんがまだ準備してないんだったら、一緒にプレゼント買いに行きませんか?』

(私が1人で決めるよりはアカリちゃんと決めた方がいいよね・・・)

「わかったよ。今週の土曜日でいいかな?」

『はい。ありがとうございます。場所は後で連絡しますね』

そう言ってアカリちゃんは電話を切った。

「た、ただいまー」

どうやらシロちゃんが帰ってきたようだ。

「シロちゃんおかえり」

「レイラさん今誰かと電話してました?」

「えっ、こ、高校の時の友達と・・・」

「やっぱり大人になっても学生の時の友達とは仲が変わらないんですかね」

「うん。それと土曜日はちょっと出掛けるね」

「レイラさんが外出ですか・・・」

シロちゃんが肩にかけていたバックを床に落とした。

「そんなに衝撃的なの!?」

「だっ・だってレイラさんが外出ですよ!?熱でもあるんじゃないかな・・・?」

(私ってそんなに引きこもり?)


私はアカリちゃんとの待ち合わせ場所に時間通りに着いた。

「レイラさん、こんにちは」

「ごめんねアカリちゃん。もしかして待たせちゃった?」

「全然ですよ。早速お店行ってみましょう」

アカリちゃんが紹介してくれるお店はどれもキラキラしていて、だんだんと自分に自信が無くなってくるのがわかった。

「お客様!こちらのお洋服なんてお似合いだと思いますよ!」

「いえ、私は友人のプレゼントを探しに来ただけなので・・・」

「そんなことおっしゃらずに!着るだけならタダですから!」

私は店員さんに言われるがまま着せ替え人形のようにありとあらゆる服を着せられた。

「レイラさんどれも似合ってますよ・・・この写真もシロへの誕生日プレゼンに・・・」

何やら不穏な言葉が聞こえたが、私たちは洋服を諦め、次のお店に向かった。

「れっレイラさん、これ・・・」

「これをシロちゃんが・・・ゴクリ」

次に私たちはランジェリーショップに来ていた。

「こっちなんかはどうですか?」

「ほとんど見えてるよ・・・」

どう考えても、シロちゃんの誕生日プレゼントにはならないが二人してこれを身にまとったシロちゃんを想像して楽しんでいる。

「でもこのお店じゃシロちゃんにはちょっと大きすぎるんだよね・・・」

「そうですね」

私たちは下着を元に戻すとお店を出た。


「なんとかいい物が見つかりましたね!」

「本当にアカリちゃんのおかげだよ。今日はありがとね」

「いえいえこちらこそ楽しかったです」

そんな笑顔を向けてくれたアカリちゃんだったが、ずっと不思議に思っていたことがある。

「アカリちゃんってさ。間違ってたらいいんだけど、シロちゃんのこと結構好きでしょ?」

今までのシロちゃんへの態度やその仲の良さから薄々感づいていた。

「やっぱりレイラさんにはかなわないですね」

どうやら答えはイエスのようだ。

「だったら、どうして今日は私を誘ってくれたの?」

アカリちゃん1人でプレゼントを選んだ方がきっとシロちゃんからの好感度も上がったはずだ。

「確かに私はシロのことが大好きですよ。だからこそシロには幸せに、喜んで欲しいんです」

そう言ったアカリちゃんはただ純粋に好きな人の幸せを願う1人の女の子だった。

「だからこれからもシロのことよろしくお願いします」

「こっ・・こちらこそ・・・」

何だかぎこちなくなってしまったが、明日はいよいよシロちゃんの誕生日パーティーだ。

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