第6話

 おじさんの家は燃えていた。


 カンナはただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


 すでに駆けつけ消火活動と救助活動をしている消防隊と救急隊の会話が聞こえた。「女の子がかなりひどいやけどを負っているが命は助かりそうだ」救急隊の1人がそういいながら他の救急隊員と担架を担ぎ救急車に乗せた。よかったとほっとしたのもつかの間、次に聞こえてきた救急隊員の言葉でカンナは再び絶望の底に突き落とされた。


 「こっちの老人と思わしき男性は助かりそうにない」


 おそらくベルナールおじさんだ。カンナはおじさんであろう男性を乗せた担架に近寄った。男性は全身が真っ黒く焼けていたが体格からこの人がベルナールおじさんであることは簡単にわかった。


 これで2回目だ。立て続けに自分の周りでというよりは自分がいる場所で火事が起こった。


 悲しみや混乱からカンナはただ燃えている家をじっと見つめることしかできなかった。


 「あの、あなたはこの家の方ですか?」


 声がしたほうに視線を向けるとひとりの警察官の男が立っていた。彼が警察官だとわかったのは警察の制服を着ていたからだ。


 そうですがと返事をすると、その警察官は1枚の書類をカンナに提示した。


 「ということはあなたがコルフィー カンナさんですか。あなたを放火の容疑で逮捕します」


 男はそういってカンナに手錠をかけようとしたが、カンナは男の手をはらった。


 「私が放火容疑?なんのことを言ってるんですか?私はさっきまで外出していて別の場所にいました。放火なんて無理です」


 カンナは男の目をしっかりと見て話し、視線をそらさなかった。


 「なるほど。ですが、あなたが放火しているところをみたという人物が大勢いるんですよ。それにここに逮捕状も出ている」


 警察官は再び逮捕状と書かれた書類をカンナに見せた。


 「そういうならその人たちをここに呼んできてください。本当に私だったのか直接聞いて確かめたいので」


 カンナは食い下がった。ここでこの冤罪を受け入れてしまえばなにか恐ろしいことが起こるような気がした。


 「それは無理です。あなたが彼らに何か危害を与える可能性もあるので証人保護の理由でそれはできません。とりあえず警察まで来ていただけますか?そこで話をしましょう」


 男は目の前にあった車の後部座席のドアを開け、カンナの背中を押して車に乗せようとした。カンナは力の限り抵抗したが男の力は彼女のそれよりもはるかに強く、カンナの体は半分以上車に押し込まれていた。


 もうだめだと観念したその瞬間だった。


 「お姉ちゃん!」


 ひとりの男がそういって警察官をどけてカンナの腕をつかみ車の外にひっぱった。しりもちをついたカンナが見上げるとそこに金色の程よい短さの髪の毛、160くらいの背丈で華奢な身体をし整ったきれいな顔。彼女がロボットと結論付けたあの青年が立っていた。



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