第6話

朝起きて横を見ると、指輪が置いてある。

それがなぜか、とっても嬉しかった。

朝から心があったかくなった。


朝ごはんはお粥。最近のマイブーム。

お米を鍋に入れ水をいれて、弱火で煮込む。

その間に、お弁当の準備。


ご飯に桜でんぶを混ぜる。頭の形に整えて、白いご飯で顔を作る。

目はのりを切って、口はコーン。

あとは昨日考えたおかずを詰めて〜。

ピックは可愛いお花のヤツを〜。

ちょうちょとか飛ばして〜。

うん、可愛い!


お粥は今日は梅干。

お塩をぱっぱ。梅干一つ。いただきます。

消化にいいから好きなんだよね。


準備完了。

「いってきます。」


「おはようございます。」

「おはよう、田井中さん。」

「おはようございます。」


服の下にある指輪がむずがゆい。

バレないかひやひやしてる。

バラれやしないのに。

お弁当のこともあるし、ついニヤニヤしちゃう。


「田井中さん何かいいことあったの?」

「え?」

「すごい嬉しそうな顔してるけど。」

「……そんなに顔に出てました?」

「うん、すっごく(笑)」


恥ずかしい……。

いつものポーカーフェイスどうした自分。

ちょっといつもの顔呼び戻さなきゃ……。

顔をぐにぐにマッサージ。


「顔真っ赤になっちゃうよ〜」


今日はいろんな人に笑われる日かしら……。

恥ずかしいな。

でも、少し心がウキウキする。


お昼はまだかまだかとずっとそわそわしていた。

それでもきちんと仕事はこなしたけども。

お昼を知らせるチャイムがなると同時にお弁当を持って飛び出した。

後ろの方で笑い声が聞こえた気がするけど、無視無視。


一度大きく深呼吸。

部屋の中を覗くと、碧さんがいた。

が、そのそばに昨日のあの男もいる。

思わずガンを飛ばす。


「あれ?指輪してるの?」


あの男が指輪に気づいた。

よし、そのまま離れろ……!!!


「あ、そうなんですよ〜。だから、そうゆうことなので……。」

「そーゆーことってー?」

「え、だから、付き合ってる人が……」

「えー?俺そーゆーの気にしないよー?」


はぁ?

うわ、キレそう。

指輪はめて出ていこうかな。

でも、私がでたら余計にややこしくなるかな。


「あの人すごい嫉妬深いから。今こうやって話してるだけでヤキモチやいちゃうの。だから、ごめんなさい」

「いいじゃん。同じ会社のヤツなの?」

「……ええ。」


こっちをチラッと見て男の質問に答える。

……私出ていこうかな。

指輪をはめて……。


「碧さん。」

「あ。……ごめんなさい、それじゃ。」

「あ、ちょ。」


無理やり話を切り上げて碧さんを連れていく。

あぁ、周りの視線が痛い……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

百合なお姫とノンケな王子。 柚雨。 @yuu_1527

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ