第3章-4 まさかの金欠予備軍

 宿は3階建てで、1階が食事処になっている、この世界によくある宿屋だ。俺たちはその3階をまるまる借りている。

 料金は4部屋×5日で金貨1枚。食事なし。


 1部屋にベッド、クローゼット、テーブルに椅子が1つづつの簡単な部屋だ。日本での俺の部屋と同じくらいの広さだ。たぶん6畳とか8畳くらい。


 そんな狭い部屋に4人が集まっている。

 わざわざ自室から椅子をもちこんで。


「えーと、今後というか、明日のことを中心に方針を決めていきます」


 意見も返事もない。さみしい。


「意見も反論もガンガンお願いします」


 返事してよ。


「とりあえず明日のことから。俺はジガンに今までの仕事の内容を教えてもらおうと思う」


 護衛くん、お疲れのようでうつらうつらしてる。

 硫黄臭いこの街は、熊の獣人には堪えるようだ。



「ナルとランは、うーん。どうしようか」


 ランは真剣に考え、ナルはやれやれといった様子だ。ごめん。


「トーゴから書類をもらう約束だったにゃ。わすれてたにゃ?」


「え、トーゴって誰」


「偉そうなおデブちゃんにゃ」


 うーん。ナルが優秀なのか俺が無能なのか。後者か。


「じゃあ、ナルはトーゴから書類もらって読んどいて。あとでまとめて教えて」


 次は姉。正直あまりやることがない。

 姉が心配そうに見ている。姉は、妹たちの生活費分は働きたい、と無理して付いてきてるので、何か仕事は与えたい。


「んー、じゃあ、ランには生活環境を調査してもらおうかな」


「生活環境の調査ですか」


「そうそう、特に衣食住について、実際にみたり聞き込みをして調査してきて」


「わかりました」


 姉はしっかりと頷く。やる気に満ち溢れている感じだ。

 かっこよく言葉をまとめてみたけれど大したことでない。要は生活スペースの見学だ。気張らないで楽にやってくれて問題ないんだけどなぁ。



「護衛くんはお疲れみたいだし、明日はおやすみで」


 ゆっくり休んで、早めにこの匂いに順応してくれ。

 銀貨を30枚ほど袋に入れて渡す。おこずかいだ。



「じゃあ今日は解散ね。おやすみ」





 急に広くなった部屋で荷物の整理をする。車に積みっぱなしだと魔法でこじ開けられてしまうため、全て部屋に運び入れてある。



 木箱には紙やペン、インクなどから、工具までもが詰め込んである。


 そして、金庫には、もちろん金貨が入っている。袋が1袋。200枚が入っている。財布分を含めると250枚程が今、手元に有る。

 今日の夕飯で金貨15枚。平均して、1食金貨5枚くらいと仮定する。支部ができるまで10日として、150枚が食費で消える。

 残りは金貨50枚。宿代もあるしあまり余裕がないな。無駄遣いすると破産してしまう。


 まぁ足りなくなったら、豚がちょろまかしたであろうお金を絞ればいいか。


 思考が変な方に向かいだしたので寝る。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る