第3章

第3章-1 鉱山長(仮)就任!?

 いつも活動的な本部の中が、静まっているほどの早朝に目を覚ました。


 全身に浄化をかけ、よそ行きの服に着替える。

 屋台で適当な朝食を取る。



 いつも早起きのナルと合流し、ノルマンディ領への出発準備が完成しているか確認してゆく。

 迅さんが準備をしたバリスタ、俺の手元に有る金貨がちゃんと1000枚あるのか。


 確認が終わったらこれをトラックに積み込んでゆくのだが、俺とナルでは重量的に厳しい。護衛の奴隷が来たら手伝ってもらおう。


「にゃー、やることなくなったにゃ。どうするのかにゃ」


「えっと、、、どうしようか」



 引っ張って行けるタイプの人間ではないので、ナルに決めてもらった。

 まぁ朝からやってる食堂へ行って、お茶しただけだが。




 迅さんと合流したのは午前10時頃。トラック1台に対してバリスタを3台積み込んだ。俺、ナル、迅さんが運転手だ。今回は護衛が6人いる。トラックの助手席に1人ずつと、車両団の先頭に、普通の車で3人乗っている。




 昼過ぎにクオイツに到着した。

 今回、俺に与えられた仕事は、バリスタの搬入のみなので気は楽だ。

 城門でひと悶着はあったものの、その他はつつがなく進んでいる。




「おーおーやっときたか。待っておったぞ」


 グラフル邸の正門付近でグラフルに出会った。外で待っていたようだ。子供かよ。


「お待たせして申し訳ございません。ここに9台ありますが昨日さくじつ同様、裏に運べばよろしいですか」


 了解が取れたので、裏までゆっくりトラックを動かす。

 因みに傭兵は、迅さんの許可を得て遊びに行った。




 昨日のバリスタの隣にセットしていく。

 流石にグラフルも仕事をするために屋敷に戻った。


 9台も同じ物を組み立てて行くのは、精神的にも肉体的にもくる。3人で協力しても1時間ちょいかかった。

 腰が痛い。





 搬入が終わったのでメイド長に案内されて、昨日の応接室に行く。




「取扱説明書を用意しましたので、運用の際にご確認ください」


 グラフルは受け取った取説を、興味津々といった様子で読んでいる。

 迅さんの話、ちゃんと聞いてるのか。



「残りの40台は契約通り、月に5台ずつ運び込みます。そして、今年中に修理業者を派遣します」


 修理業者の派遣って、日本人にするんかな、また奴隷でも買うんかな。

 グラフルに昨日の羊皮紙に準じているかを確認し、OKを貰う。


「では僕も、金貨1000枚になります。金額は正しいと思いますがご確認ください」


「いや、数えずともよい。金貨1000枚、しかと受け取った」


 相変わらず、太っ腹で気のいいおっさんだ。



「ではワシも」


 グラフルは、金貨をメイド長に渡し、メイド長から羊皮紙を受け取る。そして、その羊皮紙を迅さんに渡す。


 内容は、オリハルコン鉱山を譲渡する。というものだ。この羊皮紙が鉱山の権利書になっていて、鉱山に持ち込んだ瞬間から、鉱石は全部俺たちのものとなる。

 また、この権利書には鉱山奴隷を雇う権利と、犯罪者の強制労働を命ざれた者を受け入れる義務が生じる。


 鉱山奴隷には税がかからないため安い。

 強制労働の刑罰を受けた者は、期間奴隷となり、ほぼ無給で働かされる者だ。

 個人でなく、団体の奴隷はこの2種類しかない。強制力は弱いが、多くの人命令に従わないといけなく、消耗が激しい。



「はい、確認できました」


 最後に握手をして屋敷を出る。




 トラックを置くようなスペースは、グラフル邸にしかないので、さっさと街から出る。


 トラックの運転を護衛に任せて、普通の車に迅さんとナルの3人で乗っている。この車の運転はナルだ。




「ユウ、一度サクラサケに戻ったらすぐに鉱山へ行け」 


「何のためですか」


「責任者交代の知らせや、その後始末などを頼む。10日を目処に支部をつくる」


「了解しました」



 どのくらいの権限をくれるのか。どのくらい滞在するのか。などを迅さんと詰めながらの車旅だった。


 酔った。




 今日から鉱山長になる。交代は支部が機能を果たすようになるまで。

 目安は1ヶ月だという。


 多分初めて、責任者としての仕事になる。



 もう、尻拭いをしてくれる人はいない。

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