15 出せない声

人間はとにかく都合がいい

どうにも越えられない苦しい記憶は

まるで無かったかのように深い海へ沈む

ゆっくりゆっくり

闇に溶け込んだそれは視界から消える


普通の生活は普通の心持ちからで

揺れている心では足元もグラつくばかり


ふいに現れるそれは大層な黒で

どれだけ強がってもやっぱり立ち向かえない

分厚い壁だとか

そびえ立つ山だとか

そんな例えとは程遠い


無かったことにするのは無理

どれだけ辛くても自身を形成する1つ

ひとり、それと向き合うだけで泣きたくなる

泣くのは大嫌いだ


せめて、目印となる光を


誰かに抱きしめてほしいわけじゃない

そっと頭を撫でてほしいわけじゃない

ただひっそりと温度感じる距離にいてくれたら、それでいい

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