14 音楽

雑踏にまぎれながら流れる音

小刻みに震える足先

右手の指先は小さくベースのリズムを取る

あの人が聴いてる音楽は何だろう


別に流行りのJ-POPを逃したくないわけではなくて

仲間はずれにならないよう

異質な存在にならないよう

置いていかれる不安から

ランキングは常にチェックすべきで

動画サイトの投稿だってぬかりなく見る

まるで義務のようにひたすらに


自分が身を委ねたい音はまるで違うのに

わざわざ相性のよくないペットを飼うように

仕方なく愛でる自分が滑稽だ


それでも夜1時を過ぎれば

ぷつんと義務は終えて

追いかけたい音楽を探し出す

それは支持する人が少なくても

世間から選ばれていなくても

自分にはとても大切な音楽

包み込むのは圧倒的な心地よさ


今日もあの人の指先は小さく動く

そしてふいに確信する

あの音楽だ、って。

それだけで嬉しくなる

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