13 知っている

あるとき予兆もなくいなくなる

突然離れていく人たち

何の伝言もなく呆然とするだけだ

振り返っても理由はみつけられなくて

いくつもの「だろう」ばかり山積みになり

深く考えれば考えるほど迷路の中

あれから自分はつながりの糸が脆いと学んだ


どうにもあっけない幕切れを経験すれば

次は踏み込まないよう扉を開けるのを躊躇う

同時に自分の中は触れてはいけないエリアができて

何重にも予防線を張って

まるで敵から身を守るように隠していく

それは自己防衛と信じて疑わない


ふいにズカズカとやってくる人間は

物理的な距離を取ることで離れ

粘着質な手をかわす技術も上がった

どこまでもフラットに

一本の直線がのびていく人間関係


気づけば頼れる存在がわからなくなる

自分は正体を明かさないのに

相手には頼られたい矛盾

アンバランスなまま大人になって

今にも切れそうな細い糸ばかり無数に拵えてる


深い関わりは怖い

他人にさらけ出すものなど何も無い

そしていつか独りを痛感するはずだ

たやすく予想できる明日だし

安っぽく言えば知っている未来だ



それでも自分はまだ扉の鍵は外せない

やはり見えない敵は存在していて

それと戦っている気がしてならない

買っても負けてもマイナス

得るものは達成感と孤独感

いつか抜け出せるのだろうか

自らそんな気持ちは1ミリも無いのだから

苦笑するしかない

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