第11話



「直子が戻ってくれたら、私も辞めやすいんじゃけど」

 3人で遊んでいる最中、恵がポツリと洩らした。


「ええ~」

「ええ~」

「恵っち辞めるの? まじで~?」

「・・まじで?」

「お水一本にしぼるん?」

 直子と真央は、カラオケボックスのソファーに寝転がったままぐるっと回転した。


「まあ、悩んでいる所なんじゃけどね」

「ちょー、もう~、やめといたら男にみつぐの」

「かなり誤解があるようじゃが、わしゃ別に貢いでおらん」

「じゃあ、なんで辞めるんよ。お金足りないんでしょうが」

「別に、ラウンジも一日増やすぐらい。私は真央みたいに体力ないけ、仕事がきついんよ」

 早々に辞めた直子には何も言えなくて、恵の頭をよしよしとでる。


「あんた、なにぃ~人ごとみたいに」

「ほんまや、あんたも働け」

「ひいぃ」

 二人が直子にボディープレスを仕掛けた。ひとつのソファーに三人が重なる。


「ちょっ、モニターで変に映るって」

 恵が、1人マイクを持った。


「歌いま~す」





「恵さん辞めるんかな?」

 カラオケ終わり、直子と真央は、真央のアパートで寛いでいた。

 男関係は激しいが真央は決して自分の部屋に男は入れない。前に居座られた経験があるからだと言う。


「自分でお店出すのにお金貯めとるとかじゃたら…………親、食べ物屋さんだったんじゃろ? まあ、人のこと言えんけどな。あ~先のこと考えるとうつになる」

meミィ tooツゥ~」

 直子はキュウリの抱き枕に顔をうずめながら言った。


「なにぃ、祐樹がおらんようなって寂しなったん? この子は。まあ、いんの中じゃ会いたくても会えんのぅ~。はばしかったもんな~祐樹。あれじゃろ? マイボールで殴ったんじゃろ?」真央がナスを抱きながら言う。


 英雄伝えいゆうでんもネタがなくなり、半ば冗談みたいな話まで出ていた。












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