彼等は未だ、蝶になる日を待っている

なんと美しい物語だろう、というのが読了後に初めて抱いた感想だ。
恐ろしく純粋で何よりも淡々とした、少年の青い狂気が静かな森の香りと共に漂うような──そんな、美しい物語。
恋というにはあまりに重く、愛というにはあまりに劣情に満ちたその感情が、乾いた大地に染み込むようにして私たちの心を満たすこの感覚を、なんと呼ぶべきでしょうか。
外側も作らぬうちに蛹になって融けてしまった彼女を心の中に抱き続けて、二人がいつか蝶になる──そんな夢を見ています。

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