第18話 『SDガンダムGX』後編
『SDガンダムX』が発売されたのち、その続編の『GX』が発売される。ぼくの評価では、これはまさに究極の「ガチャポン戦記」だと思うのだが、世の中の流れは、シミュレーション・バトルを使用した『Gジェネレーション』へとシフトしていっていた。
この『GX』では、使用できるモビルスーツが増え、モビルスーツによる戦艦への攻撃が、別タイプのミニゲームになったりといろいろ改良が加えられていた。
戦艦への攻撃は、画面の中心にいる戦艦へ対してモビルスーツが急降下して攻撃するタイプの画面である、自機としてのモビルスーツは降下しているので、左右に弧を描いて対空砲を回避することしかできない。
慣れないうちは、対空砲火を喰らいまくって、撃墜されまくったが、慣れてくるとこれまた攻略は容易で、つぎつぎと敵戦艦をモビルスーツで落とせるようになった。
艦隊を生産して、モビルスーツを搭載し、敵陣の近くまで輸送して戦力を展開。敵の突出したユニットに、こちらのユニットを集中させて各個撃破。
広いマップを舞台に、毎日楽しく戦いまくっていた。
で、ぼくが続編の『GX』を買ってやっていると聞いて、やらせてくれとバイト仲間の恥辱王ラングがうちに遊びに来た。
ちなみに彼、自分ではゲームをまったく買わないで、みんなから借りてばかりいた。で、貸してやると返ってこない。
そして、ついたあだ名が「ファミコン・ブラックホール」。
借りたゲームを勝手にお店に売却しているという噂もあった。
ラングとは、対戦モードで、赤組青組に分かれてプレイした。
本来、このシリーズの肝は格闘バトルで、モビルスーツの操作がうまい方が勝つ。戦略とかは、いっさい関係ない。
やり慣れているぼくと、ソフトを持ってもいない恥辱王ラングでは、本来勝負にならないのだが、本作は最大7機のバトルもありえる複数機によるバトルだ。プレイヤー1とプレイヤー2の操作する機体以外は、基本的に自動操縦、CPUが受け持ってくれる。
本来ならば、いい戦いになるはずだった……。
が、じっさいはぼくの一方的な勝利であった。その辺りも、シミュレーションとして問題あった部分かもしれない。
恥辱王ラングが選んだ勢力は、ティターンズ、アクシズ、ネオジオンだと思う。ラングは、ジオン軍が好きなのだ。
いっぽうぼくは、たぶん連邦軍とクロスボーンを選んだと思う。クロスボーンバンガードは知名度は低いが、この勢力の小型モビルスーツは実は高性能である。ただし、それよりも問題ありは、連邦軍だった(笑)。
ぼくがとった戦略は至って明快。
ガンダムGP03デンドロビウムを大量生産し、戦艦に乗っけて大量輸送。いっきに展開させて、敵のユニットに集中攻撃。それだけだ。
ゲームを知らなくて、ガンダムを知っている人は、まさかと思っただろう。え!? このゲームでデンドロビウムが使えるの?と。
使えます。モビルスーツとして。
デンドロビウムを知らない人は、画像検索してくれ。おそらく出てくるのは、白くて四角い巨大な宇宙戦艦だと思う。そして、よく見ると、その戦艦のさきっぽに小さいガンダムの顔がついていることに気づくだろう。あれがガンダムGP03だ。
まるで、むかしの帆船の舳先についているマリア像みたいにガンダムがついているが、あれが本体。そして、あの巨大な四角い戦艦は、ガンダムの付属品。
だが、このデンドロビウム。巨大サイズのライフルと、射出式のミサイル・ポッドを装備している。また、艦体の一部が巨大なアームになっていて、戦艦サイズのビームサーベルを振り回す。
そして、これらがすべて、ゲームでは再現されていた。
そんなもんが3機もバトルに参加して、ビームサーベル振り回されたらたまったものじゃあない。サーベルが画面の3分の1以上を薙ぐわけだから、逃げ場なんてなし。
もう操縦技術もなにもあったもんじゃない。ぼくの圧勝だった。
つーか、デンドロビウム強すぎ。ちなみに、デンドロビウムを破壊されても、それは装備品なのでガンダムGP3は無傷。そのままバトルに参加してくる。
そして、戦艦に帰還して補給を受けると、デンドロビウムは完全復活する。おいっ!
いやまあ、これ、たしかに問題ありだなぁ。アニメの通りだけど。いや、アニメではデンドロビウムは1機しかでなかったけどさ。
ということで、ぼくの圧勝だった。恥辱王ラングはちょっと凹んでたな。バイト先でも、ラングが全然勝てなかったことが話題になってたから。
ただ、少しして、彼とは再戦したんです。なんでもゲーマーの弟さんと実家で戦ってきて、やり方を教えてもらったという事だった。まあ、やり方次第でどうこうなるゲームではないのだが……。
じゃあということで、ふたたび我が家で対戦。設定も展開も前回とほぼ同じだった。
快調にデンドロビウム部隊を作製し、3隻の戦艦にフル搭載して、ラングの主力艦隊へ迫るぼく。
いっぽうビビったラングは、がちゃがちゃとマップの表示位置をいつまでもいじくりながら、自分の艦隊を後退させるのだが、マップには限りがある。隅に追い詰められたらもう打つ手はない。
にもかかわらず、いつまでもガチャガチャ全体マップをいじっている。
が、マップをいくら見ても戦局は変わらない。ぼくの艦隊は、ラングの艦隊を確実に追い詰めていた。艦船の数もこちらが勝っているし、搭載しているのは総てデンドロビウム。
たぶんあと2ターンで追いつくというとき、ラングの反撃が来た。それは、ぼくが最初に「使えない」と判断してすっかり切り捨てていた要素だった。
コロニーレーザーだ。
ラングは自分の艦隊を後退させて、ぼくの艦隊をこのコロニーレーザーの射線軸に誘い込んでいたのだ。
その射線を確認するために、いつまでもガチャガチャマップをいじっていた。そして、思い出せば、彼はまっさきにコロニーレーザーを取りに来ていた。
えっ!? と思ったときには、こちらの主力艦隊はコロニー・レーザーの照準ゲルドルバ上。あっというまに焼き尽くされて全滅させられていた。
「うそっ!」
「いやー、これ。実家でうちの弟にやられたんですよ。もうバレやしないかとドキドキでした」
まんまとやられたが、無邪気に笑う恥辱王ラングはなんか憎めない。
こちらも、相手をバカにして進撃を続けたのは反省すべきだ。
ただし、このコロニーレーザーは、気づかれていればやはり当たらない武器。そこから心機一転反撃に出たけれど、規定ターン内で戦力比をひっくり返すことはできず、判定でぼくの敗北。悔しい敗戦だが、いい勉強にもなった。
あのときは、まんまとやられたよ。
そののち、このSDガンダムのアクション・バトルがあるシリーズは、ゲームキューブで一作『SDガンダム ガシャポンウォーズ』として2005年に発売される。これはなんと4人で対戦できるシステムだった。
ぼくはもちろん買い、トシッキーとログ夫くんと3人で対戦し、けっこう楽しめた記憶がある。演出も良かった。
が、ハードの進化とともに、モビルスーツを操作できるゲームも増え、結局はこの形式のシミュレーションには、限界がきたのかもしれない。
ぼく自身、このゲームキューブ版はあまりプレイしなかったし、そののち類似のソフトも作られていないようだ。
結局は、問題の多かったファミコン版あたりが、一番おもしろかった気がするから不思議だ。
あの当時の古いゲームの、不自由さ。それはいま思うと、大きな魅力のひとつだったのかもしれない。
むかしのゲームの話をしよう 雲江斬太 @zannta
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