第17話 『SDガンダムGX』前編


 なんと! あの「ガチャポン戦士シリーズ」の続編が発売された!



 その名も、『スーパーガチャポンワールド SDガンダムX』(1992年)!

 しかも、新型ハード、『スーパーファミコン』でだ!



 美しくなったグラフィック(いや、あんま変わらないか?)、進化した戦略性(基本アクションだけど)、そして、なによりもCPUの思考速度が格段に速くなっていた(もとが遅過ぎただけだけどな)!



 今回は、この『スーパーガチャポンワールド SDガンダムX』とその続編『SDガンダムGX』(1994年)の思い出について、主に語ろうと思う。といっても、いつも通り、記憶があやふやだが。




 まず、以前語った『SDガンダムワールド ガチャポン戦士2 カプセル戦記』が1989年の発売なので、ほんの数年で家庭用ゲーム機の性能が格段に進化したことが分かる。


 もう「ファミコン」が「スーパーファミコン」に変わってるからね。サイヤ人がスーパーサイヤ人になったくらいの進化だ。


 まずグラフィックが綺麗になった。といっても当時のレベルだけど。

 そしてなにより、全体マップが四角いマスから、六角形のヘックスに変更。ちょっと、当時はやりの『三国志』っぽくなった。


 と、同時に、バトルも進化。

 ヘックス戦なので、隣接した敵を含んだ、最大7機のモビルスーツ・バトルが可能に!

 もうこれは、ぼくにとって夢のようなゲームだった。



 ちなみに、ガチャポン戦士のシリーズには、アクション・バトルを採用せず、シミュレーション・バトル、すなわち勝手に戦うシリーズの流れもあるのだが、ぼくはそちらは嫌いで一切プレーしていない。

 やっぱモビルスーツを操縦したいじゃん! それが理由なんだけど、当時はモビルスーツを操作できるゲームがほとんどなかったのだ。


 ということで、この『ガンダムX』そして『ガンダムGX』の発売に、ぼくは小躍りした。


 ということで、行ってみよう、ガチャポン戦記の世界へ!




 まず、システムが旧作の、シビアでシュールな世界観から、アニメに寄ったリアルな方向へ進化した。それというのも、たぶんだが、旧作ではできなかったことが、ハードの進歩により可能になったことが大きいのではないだろうか。



 全体マップ上にあるコロニーを占拠し、そこからの収益でモビルスーツを開発し、敵のモビルスーツを撃破しつつ、敵の拠点を侵略して勝利を目指すのは変わらない。


 ただし、全体マップである宇宙には、なんとコロニーレーザーがあり、マップ兵器としてレーザーを発射できる。ただ、これ。マップがヘックスなので、好きな角度では撃てない。つまり射線は選択できるが、かなり規定されているため、その射線上に入らなければ喰らうことがないという、有用性の低い物だった。



 また、宇宙マップ上には、地球と月がある。地球をクリックすると、マップが地球に切り替わり、そこでは地上戦や水中戦ができる。今作では、水中では水中用モビルスーツや水中用モビルアーマーしか使えない。


 また、当然といえば当然だが、地上では宇宙専用モビルスーツは使用できない。旧作のように、地上でジオングが、足もないのに動き回ったりはできなくなった。


 そして、マップ上の宇宙から地球に移動するためには、戦艦にモビルスーツを搭載して大気圏突入する必要がある。逆も然り。

 ただし、大気圏突入能力のあるゼータ・ガンダムだけは、単独で地球に降りられた。

 降りるだけなら、アニメではガンダムでも出来たはずたけど、ゲームではできなかったと思う。



 モビルスーツの生産は工場で同時に4機までできる。

 また、モビルスーツは、戦艦に搭載させて長距離を移動でき、戦艦内では消費した武器弾薬の補給が出来たりと、戦略性も高まった。

 ま、正確には戦略性ではなく、じっさいのアニメに寄せた「展開」といった方が正しい。

 ちなみに、戦艦が落とされると、搭載したモビルスーツも全滅した。



 当時はネットでバトルということはまだまだ不可能だったので、おもにCPUとのバトルになる。赤組と青組に分かれて、アニメにおける「勢力」を選択でき、その勢力にのっとったモビルスーツを生産できる仕組み。「連邦軍」とか「ティターンズ」とかを選べるのだ。



 ただ、このアクション・バトル形式のガチャポン戦記シリーズ。世間一般的にはもしかしたら不評だったのかもしれない。シミュレーション・ゲームで、バトルだけアクションというのは、やはり相性は悪いのだろう。


 『X』が発売されて、楽しくやりこんでいたら、おなじソフトを買ったバイト仲間のログ夫くんから相談を受けた。


「なんか、『SDガンダムX』、買ってやってるんですけれど、煮詰まっちゃってどうにもならなくなっているんですが、ちょっと見てもらえますか?」



 煮詰まっちゃってどうにもならなくなるとは、どういうことだろう?

 ぼくには全く理解不能だったので、彼のアパートまでお邪魔して、ゲームの進行状況を見せてもらった。


 スーファミを起動し、データをロードして打ちしだされた全体マップ。

 それを観たぼくは、絶句した。まさに、言葉が出なかったのだ。



 ログ夫くんの全体マップは、宇宙も地球も月も、すべてがモビルスーツで埋まっていた。

 たしかゲーム・システム上、生産できるモビルスーツの上限が決まっていて260機ではなかったろうか? 正確な数字は忘れたが、とにかく上限いっぱいのモビルスーツ合計500機以上が全体マップにひしめき合っていた。

 まるで、蜂の巣の内部構造を見ているみたいに……。



「どうして、こうなった?」


 ぼくの質問に、ログ夫くんは黙ってプレイを続けて見せてくれた。


 ログ夫くんは、とにかくユニットとしてドライセンを大量生産していた。対するCPUはジム。


 ログ夫くんがドライセンを選択した理由は明白だった。

 ドライセンはアニメではドムの後継機であり、その近接武器はトマホーク。ゲーム内では、ちょうど旧作の「ガチャポン戦記」で登場したゲルググのように、このビーム・トマホークを360度回転させて攻撃する。


 つまり、ボタンを押しながら敵に接近するとビーム・トマホークが当たるので、使いやすい。おまけにコストも安いので、大量生産しやすい。

 アクション・バトルに慣れていないログ夫くんは、このドライセンを頼りにバトルを勝ち進もうとしていたのだ。



 対する敵は、同じく低コストのジムを大量生産。おたがいに薄利多売でモビルスーツの生産競争をつづけ、雑兵部隊はあっという間にユニット最大生産数に達してしまう。もう、作れないところまで行き、工場のすべてのドックも生産状態「完成済み」のドライセンとジムが発進をまっている状態。


 隣接したログ夫くんのドライセンと、CPUのジムがバトル。何機かが撃墜される。それがログ夫くんのドライセンだろうが、CPUのジムだろうが、関係ない。


 撃墜された分だけ、ドックで完成されていたドライセンとジムが出撃してきて、もとの画面にもどる。そして、空いたドックで新たなるドライセンとジムの生産がスタートする。彼らは数ターン後には完成して、出撃待ちの列に並ぶことになる……。


 これが永遠に続くのだ。



 もう、完全な膠着状態だった。このままいくら続けても、ゲームは先には続かないだろう。さすがにこれは、アドバイスのしようがなかった。

 こういうふうにやるゲームではないと言いたかったけど、ある意味これが、「ガチャポン戦士シリーズ」の問題点だったかもしれない。



 このシリーズは、アニメのガンダムのバトルを体験するということでは優秀だが、シミュレーションとしては、欠陥品だったのではないだろうか。


 それが、消えて行った理由なのだろうか? 事実、続編の『GX』は、そんなに話題でもなかった気がする。


 ぼくとしては新作が発売されて大喜びだったけど。

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