第19話智香の友人

呼び鈴が鳴り響いた。

玄関の扉が開くのと同時に、若い女の子が入って来る。その女の子は慌てた様子で智香へと駆け寄った。


智香ともか。心配したよ」


智香へと抱き着いて泣きじゃくる少女。その女の子は警官の制止も利かず、堂々と殺人現場へと入ってくる。


「なにをしているのですか?」


持田と言う警官は声を上げた。


「あなたは?」


「すみません。智香の同級生の友里と言います。智香の部屋で男が死んでいると聞いて、驚いて駆けつけてきたのです」


友里と言う女の子は、由香へと名刺を差し出すと、智香へと抱き着いた。まるで姉妹のようなふたりの姿に、僕は唾を呑み込む。


「いくら殺人事件の捜査でも、智香は事件とは無関係です。早く智香の事情聴取を切り上げてもらえますか?」


友里は、由香へと向き合って言った。

何と言うか殺気立った雰囲気である。


「誤解しないでください。

誰も智香さんが、事件に関与したとは言っておりません。ただ第一発見者と言う以上、調べるのがこちらの役目ですので」


由香は淡々と言った。

あなたも、部外者のはずですが…


すると、友里は「――行こう」と促して、智香ちゃんを連れて行ってしまう。どうやら友里の家で過ごすようだった。


「大変、失礼しました。ご協力ありがとうございます」


由香が言うと、怪訝けげんのままの友里に会釈した。僕は、ふたりの光景にただ呆然と眺めるしかなかった。


「持田くん」

「はい、由香さん、何でしょう?」

「鑑識に聞いて、判った事をまとめておいてくれるかい?」


持田は「了解」の意味合いを込めて、片手を上げた。そのまま現場検証へと戻る持田の後ろ姿を見詰める。

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