第17話

「・・・ら石・・・白石!」

「すみません東先輩。なんですか?」

箱根旅行も二日目となり、私も楽しみにしていた箱根ロープウェイなのだが・・・

(昨日の峰山先輩のあれって・・・やっぱり告白なのかな・・・)

「俺なら、白石を幸せに出来るよ」

峰山先輩はそう言い残すと、すぐにその場を去ってしまった。

今日も朝から話せずに、私は1人、悶々としてしまった。

「昨日何かあったの?私でよければ相談乗るよ」

「だっ、大丈夫ですから!」

いつまでも先輩との間に溝は作っていられなかった。

(私の思いは・・・)


「あっ!アキくん、ロープウェイ見えてきたよ」

「ほっ、本当ですねー」

(何なんだこの人おおおおおおおおおおおおおお!?)

峰山さんは、昨日あんなことがあっちも関わらず、何事も無かったかのように振舞ってきた。

(あれから僕は一睡も出来なかったて言うのに)

アキ、そして白石はそんな気持ちのまま最終日の箱根旅行を楽しむのだった。


「嫌ぁぁぁぁぁ!高い高い高い!」

「アっ、アキ大丈夫?」

ロープウェイに乗り込みしばらくすると、アキがビビり始めてしまった。

「下透け・・・」

「アキくん、高いところ苦手なの?」

アキは足をガクガクとさせながら、黙って頷いていた。

(アキって高いところ苦手なんだ・・・)

知らないアキを知れるのは嬉しかったが、少しだけモヤモヤする。

「アキくん、もうちょっとだから頑張って!」

峰山先輩は何事も無かったかのように、アキを励ましていた。

「・・・・・・」


「硫黄の匂いが凄いね!」

「僕この匂い苦手です・・・」

そんなことを言いながら、ワイワイとみんなで上に歩いていった。

「・・・アキくん!卵食べに行こ!」

「え?ちょっ!?東さん!?」

東先輩はそう言ってアキの腕をつかむと先に行ってしまった。

「・・・行っちゃいましたね」

「俺たちも歩くか」

「そうですね」

その後は二人揃って黙ってしまった。

(言葉が出てこない・・・)

「白石、昨日のことなんだけどさ、返事はいつでもいいから」

「そういうわけにはいかないです」

私は立ち止まり峰山先輩と向き合った。

こんな気持ちのまま、先輩と接するのは嫌だし何よりも仕事に私情を挟みたくはない。

「白石らしいね。それで俺の話の答えは聞かせてくれるかな?」

私には自信がなかった。

「私、人と付き合ったこと無くて・・・それに!」

「アキくんのこと?」

「アキとはそういう関係ではないです。それに私には恋愛がよく分からないんです・・・」

話せば話すほどに自分が醜く感じる。

それを察したのだろうか峰山先輩は再び歩き出した。

私の言葉できっと峰山先輩は傷ついただろう、しばらく私の方を向いてはくれなかった。

「携帯の充電切れてたみたいで連絡出来なくて、東さんは当てにならないので心配したんですよ?二人でどこか寄っていたんですか?」

アキと合流すると、心配したようにアキが聞いてきた。

「何でもないよ。それより私にも1つちょうだい!」

「あぁ!最後の1個だったのに・・・」

落胆するアキを横目に私は卵を頬張った。

「そろそろ行くわよ!アキくん!」

「またですかぁぁぁぁぁぁ!!」

いつの間にか東先輩とアキも仲良くなっていた。

「本当に、アキも楽しそう」

「白石は楽しいの?」

「楽しいですよ」

「アキともっと一緒の方が楽しいんじゃない?」

「・・・これが恋って気持ちなんですかね」

「出来れば俺的には気がついて欲しくなかったんだけど、恋だろ?それ」

今まで私はただアキを支配欲だけで愛していた気持ちになっていたのだろうか。

今だって東先輩に手を取られ歩いているアキを見るとなんだかモヤモヤしてくる。

「私はどうしたらいいんでしょうか?」

「白石は人に人生を決めてもらうほど臆病で無責任な人間だったか?」

「・・・やっぱりいい人ですね、先輩は」

「俺はお前のことが好きなんだから、どんな形であれ幸せになって欲しいんだよ」

「・・・でもきっと、先輩の望む幸せには・・・」

「だからって別に諦めないけどな。せいぜい頑張れよ!」

(やっぱり恋の力って凄いんだな)

私はそんなことを思いながらアキたちの元へと向かった。

(いずれ、私たちにも決着をつける!)

逃げてきたことへ立ち向かうかのように、二人の関係は大きく変わっていく。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る