第18話

「それで?白石さんとの旅行はどうだったの?」

三連休明けの火曜日、待ち構えるように校門前で待っていた雲雀から聞かれた。

「別に白石さんとの旅行ではなかったし・・・」

「なんだか歯切れが悪いわね・・・」

雲雀はあまり峰山さんとの話のようなことは、話したくなかった。

「まあまあ雲雀、アキも色々あったんだよ」

すると珍しくあきらから、フォローが入った。

「まあ私も深くは詮索しないわよ」

雲雀をなんとか誤魔化した。

(そういえば別にごまかす必要性はあったのかな?)

「あのさ、2人に相談があるんだけど」

始業よりもかなり早めの教室で、2人にに相談があった。

「どうせ白石さん関連なんだろ?」

「あきら・・・エスパー?」

「私にもわかるわよ」

いつの間にかエスパーに目覚めた2人に向き合ってその内容を話した。

「白石さんの誕生日プレゼントねぇ」

「相変わらず白石さんのことになると真剣だな」

そう、来週の日曜日は白石さんの誕生日なのだ。

「この前姉さんから聞いて、一人で考えてたんだけど、結局思いつかくて」

いざ一人で考えるとなると、意外と白石さんのことを知らなかったりと、わからなくなってしまった。

「でもアキ以上に私たち白石さんのこと知らないからね」

「でっ、でも雲雀は一応女の子なんだし・・・」

「一応?さて、1限の支度でも」

(やばっ、地雷踏み抜いちゃった・・・)

「ほんとにゴメン!だから手伝って」

土下座する勢いで僕が謝罪すると、雲雀はこっちを向いた。

「冗談よ。どうせだったら、買い物にも付き合ってあげるわよ」

「それで?結局なにをプレゼントするんだ?」

「そうね、ベタだけど入浴剤とか」

(まずベタかどうかもわかんないな)

「でも白石さん、あんまり長くお風呂に入いらないんだよね」

「難しいわね・・・あきらは?何か思いついた?」

話をふられると、しばらく考え込んだ後一言だけ言った。

「・・・有給とか?」

「一番喜びそうだけど、僕たちには無理かな」

そうして3人で唸っていると始業のチャイムが鳴ってしまった。

「また放課後にでも考えましょう」

(旅行のこともあきらに話しておきたいな)

あきらもある意味いい相談役だ。


「峰山さんね、それで今は白石さんと峰山さんはどうなったんだ?」

昼休み、僕はあきらと二人で屋上に忍び込み昼食を取っていた。

「盗み聞きしたわけだから聞きにくくて・・・」

実際それで聞いたとして、白石さんからどんな言葉でも言われるのが嫌だった。

「白石さんがアキに何も言わずに付き合うわけないだろうし、大丈夫だろ」

「そうだと僕は思ってるけど・・・」

「アキは白石さんのこと信用してないのか?」

「しっ、信じてるから!」

「それなら大丈夫だろ」

そう言ってあきらは屋上を後にしてしまった。


「ショッピングモールに来たわけだが、まだ私たちには何を買えばいいのかがわからない!」

放課後、僕たちは一つ先の駅で降り、ここら辺ではもっとも大きいショッピングモールへとやって来た。

「とりあえず雑貨屋にでも行ってみるか」

あきらの一言で僕たちは雑貨屋に向かった。

「色々あるけど、何がいいんだろ」

「見て見て!香りが出るスティック!」

(似合わないだろうな・・・)


「クシュッ!」

「白石、風邪?」

「噂されてますね」

きっとアキあたりだろうから家に帰ったら吐かせてやろう。


僕は何故だか身震いしながら色々と雑貨を見て回ったが、今ひとついい物が見つからなかった。

「難しいね」

「あの白石さんだからな」

「「そっか~」」

付き添いの二人の罰が確定したところで僕はふと、店を出たところのある商品に目を引かれた。

(ガラス細工かな?)

「アキ、何見てるの?・・・ガラス細工?」

正直なところ、あまり白石さんへのプレゼントには向いていないような気もしたが、でもきっと白石さんは喜んでくれると思った。

「それにするんだな」

「確かにそんなに綺麗だったらずっと見てたくなるよね」

「これにしようかな・・・うっ!ちょっと高い・・・」

綺麗なガラス細工の値段だけは可愛くなかった。

「俺たちも出すよ」

「白石さんにはアキがお世話になってるしね!」

そうして3人で仲良くガラス細工を購入した。


「白石さん、誕生日おめでとうございます!」

僕はそう言ってケーキを持ってくると、白石さんは驚いたような表情を浮かべた。

「私の誕生日教えたっけ?・・・まあ細かいことは気にしないで、早く食べよ!」

急かされるように僕は二人用の小さなケーキを切り分けた。

「それと、僕とあきらと雲雀から」

「ありがとう。ガラス細工か、あんまり私には似合わないような気がするけど綺麗だね」

思った以上に白石さんが喜んでくれたようでよかった。

「もう一つ、僕から」

僕はあきらと雲雀にも黙って購入していた物を白石さんに渡した。

「メガネ?」

「最近、白石さんがパソコンで仕事してる時に目が辛そうかと思って」

すると白石さんはケースからメガネを取り出すとメガネを付けた。

「メガネ欲しかったんだけど、似合わないかなと思って・・・どうかな?」

普段とはまた違った、大人びた顔になった白石さんが首を傾げる姿に僕は瀕死状態にまで追いやられた。

「似合ってますよ」

「似合ってるじゃなくて、女の人にはもっと違うこと言うでしょ?」

「可愛いですよ!」

少しやけになりながらも僕ははっきりと言った。

「そっ、そう・・・」

言わせた本人が赤くなっていて、なんだかもう手がつけられなくなってしまった。

そんな生暖かいような空気の中、食事を進めていると、メールの着信音が鳴り響いた。

「ん?アキじゃない?」

(あきらか姉さんかな・・・)

「・・・・・・」

僕はその送り主を見て、身体がフリーズしてしまった。

「アキ?誰だったの」

そして僕は、白石さんに送り主を伝えた。

「僕の母さんが、白石さんを連れて家に来いって・・・」

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