第16話

「着きましたね箱根!」

宿泊するホテルに着き、私は体をしながら言った。

「いやー、もうちょっとアキくんで遊びたかったなー」

何があったのか、出発前よりも東先輩がつやつやしていた。

「帰りは席変えてください」

アキがやけにぐったりしている。

(随分と東先輩にいじめられたな・・・)

私が可哀想なものを見る目でアキを見ていると、峰山先輩が声をかけてきた。

「荷物を置いたらまた移動だよ」

初めて見たアキの表情が抜ける瞬間だった。


そうしてまず私たちが訪れたのは、箱根神社だった。

「駅伝程度しか記憶無いな・・・」

「私もです・・・」

女子2人で呟いていた。

「あれ?アキくんと峰山は?」

東先輩にそう言われあたりを見回すと、少し先で解説を熱心に聞くふたりの姿があった。

「やっぱり歴史的なところっていいよね」

「峰山さんもそう思いますよね。こういう所って何ていうか神秘的ですよね・・・」

熱心に話し合う2人が居た。

「2人って仲良かったっけ・・・?」

「ほとんど初対面だと思ったんですけど」

しかしそれ以上に私たちはあることに戸惑った。

((私たちって、芸術わかんない!?))

2人して周りも気にせず頭を抱えた。

しばらくすると自由時間になり、私たちは4人で昼食を取ることにした。

「箱根の名物ってなんだろ」

「卵くらいしか知らないです」

しかし卵は明日また食べることになっている。

「箱根は湯葉とか美味しいですよね」

私が3人に言うと、そのまま湯葉を食べることが可決された。

「湯葉なんて大人ぶって修学旅行で食べた以来だな」

「峰山先輩が?意外とそういうところあるんですね」

「俺だって少年の心はあったんだよ」

そう言うと峰山先輩は黙って湯葉を食べ始めてしまった。

「少年だね」

「東、黙って食べろ」

食べ終わってからは、しばらく箱根の町を散策してカフェでゆっくりしていると、すぐに時間になってしまった。

「あっという間でしたね」

「あそこのパンケーキ美味しかったな」

ホテルでの食事でも私たちは今日の話題で持ち切りだった。

「そろそろ部屋に行こうかな」

「それなら俺たちも。アキくん同じ部屋だから一緒に行こうか」

「私たちも一緒に行こうか白石。あっ、アキくんなら部屋に来てもいいからね」

白石さんと夜通し話せるのは魅力的だが、それ以上に東さんが危険だったので遠慮しておいた。


「アキくんは、白石のことどう思ってるの?」

部屋に向かっていると、峰山さんが聞いてきた。

「らしくないですね。どうしたんですか?」

「2人って同棲してるんだろ?だったら何かしらの感情は抱いてると思っただけ」

(好きだって伝えるわけにもいかないし)

僕は少し迷ったが答えを返した。

「大事な人ですかね」

「大事な人って?」

「言葉通りです。ちなみに峰山さんは白石さんのことは?」

そう言うとちょうど部屋に着いてしまった。

「その話はまた今度。お風呂入ってくる」

はぐらかされた気もしたが、また次も会ってくれるのが少し嬉しかった。


「はぁ~いい湯だったな」

私はまだぽかぽかした身体で部屋に戻ることにした。

「白石、お風呂入ってきたの?」

後ろから声をかけられ、振り返ると峰山先輩が立っていた。

「はい、先輩たちに絡まれるの大変なんで少し早く出てきましたけど」

「そっか、それなら少し話でもしない?アキくんも先にお風呂行っちゃったし」

「いいですよ」

私と峰山先輩は休憩スペースに立ち寄り、少しゆっくりすることにした。

「飲み物買ってきたけどいる?」

「ありがとうございます。じゃあ紅茶を」

紅茶を受け取ると、峰山先輩は話題を切り出してきた。

「さっきさ、アキくんに白石のことどう思ってるのか聞いたんだ」

「意外ですね、峰山先輩がそんなことに話すなんて」

すると峰山先輩は「本当に似てるなぁ」と笑いながら話を続けた。

「そうしたら意外と答えてくれたんだよ」

さすがに私もなんと答えたかは聞かなかった。

「逆に白石はアキくんのことどう思ってるの?」

「えっ?私は・・・・・・」

アキのことは大事に思っていたが、実際に口に出すのが難しかった。

「守ってあげたい人です」

「・・・そういうところが好きなんだよな」

・・・今なんて・・・?


「少し長風呂しちゃったかな」

僕は火照った身体を落ち着かせるために休憩スペースに向かった。

「・・・白石は・・・思ってるの・・・」

(あれは、白石さんと峰山さん?)

二人の会話がとても気になったがここからではよく聞き取れず、休憩スペースに入ることにした。

「・・・たい人です」

(白石さん今なんて言ったんだろ)

「・・・そういうところが好きなんだよな」







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る