認識する世界は、人によって全く違う

昔、近視が急激に進行したとき、世界の輪郭が曖昧になって行く不安と、メガネをかけると急に鮮明に見えるようになる落差に、戸惑った覚えがあります。
生理学実習の際、対座法で測定した視野が、「眼裂の形に応じて」変わっていることに気づき、学友と比べて遊びました。目が細い人は、視界も細かったのです。
……などは卑近な例ですが。視覚ひとつとっても、人により「見え方」は随分違うのだな、と学びました。

本エッセイの著者は、片眼弱視、片耳難聴と明かして下さっています。その状態で認識される世界を、そうでない私たちにも解り易く解説しておられます。

書かれているのはヒトの知覚の問題ではありますが。世界の「観え方」は、人によりこんなにも違うーーそこに哲学的な命題も、顕われてくる、かもしれません。

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