モノラルと2Dの国

卯月

モノラル編

救急車がどこから来るかわからない

 十字路で信号待ち中の車の、助手席に座っています。

 停止線から二台目の位置です。

 そのとき、救急車のサイレンが、聞こえました。

 音がどんどん大きくなるので、近づいてきているようです。

(あー、後ろから来てるな)

 と思いながら待機していたところ、


 ――の交差点を、通過して行った。



 ……というような事例が、山ほどある。


 人間や、犬や猫などの動物は、二つの耳を持っている。

 耳に音が届くまでの時間や、聞こえる音の大きさは、左右で微妙に異なる。その違いから、音源の方向を判断しているのである。

 しかし私は右耳難聴、ほぼ左耳オンリーで生活している。日常生活に支障はないが、音の方向を聞き分ける能力は極端に低い。

 従って、「サイレンが近づいてくる」ことはわかるのだが、どちらから近づいてくるかはわからない。


 ――厳密には、「こっちから来る」と思う方向は一応あるものの、ほとんどの場合において間違っている。

 長年の経験の蓄積により、私自身が、自分の聞き取った方向を信用しないことを決意した。したら危険。目視確認必須!


   ◇


 応用編。


 携帯電話が行方不明になりました。

 人に頼んで、自分の携帯電話に電話をかけてもらいます。

 着信音が聞こえるので、室内にはあるようです。


 ――「こっちで鳴ってる」と思う方向は一応あるものの(後略)。


 最近はもう開き直り、鳴らしてくれた人に、そのまま探索をお願いしている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る