口裂け女

ペンギン太郎

口裂け女

 ある深夜の事である。

 路地裏を歩く少年に向かって、コートをまとった女性が話しかける。とても美しいが、マスクで顔の半分を覆っている。


「私、綺麗?」


 妖艶な声が、闇に覆われた静寂に響き渡った。

 古い街灯で照らされた少年。じっと、俯いている。

 アスファルトにはゴミが散乱している。

 少しだけ頭を持ち上げて、綺麗な長髪を伺う。


「綺麗です」


「これでもぉ?」


 女性はマスクを外した。

 耳まで避けた大口が露わとなる。

 少年は大きく顔を持ち上げた。


「ぎゃーっ、ばけものーっ!」


「おいこら、人の顔を見て逃げるなよ。失礼な女やな。足、はやっ!」


 口裂け女は一目散に逃げていく。

 のっぺらぼうの少年は怒った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

口裂け女 ペンギン太郎 @penguin009

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ