第3章_last ひとひらの雪


「今年も来れたねぇ」



「当たり前だよ、毎年、来ようね」



「ありがとう、ハル」



「なぁ、幸世

俺達もこの木のこと…一生忘れないんだろうね」



「そうだねー」



「でもさぁ、別にここだけが特別じゃないんだよ」



「どういうこと?」



「俺はさぁ、幸世が隣に入れば世界中何処にいても笑っていられる気がするんだ。

だから、例えこの木がなくなったとしても、何かが変わる訳じゃない。

大切な思い出は場所や物だけでなくて、心の中にあるものなんじゃないかなぁって思うんだ」



「…ハルって、すごいね」



「エヘヘ、俺、ちょっと、いいこと言った?」




照れ臭そうにする彼の胸にそっと頬を寄せた




「ちょっと…じゃないよ。

すごーく素敵なこと言った」




包み込むように抱きしめてくれる長い腕が好き

温かくて安心できる逞しい胸が好き

涙を拭ってくれる優しい指が好き


太陽みたいな笑顔が…大好き




「ハル…どうしよう~」


「どうしたの?」


「私ね、ハルのこといっぱい好きになっちゃった

ハル、つぶれないかなぁ?」


「大丈夫に決まってんじゃん。

任しといて!」


「フフ、良かった」




舞い降りてきた雪が彼女の肩に落ちて、すぐに消えてしまった



"ひとひらの雪”は

とても儚くてすぐにその姿はなくしてしまう



でも、その小さな雪のかけらが少しずつ少しずつ降り積もり、瞬く間に広大な山は一面真っ白に覆われる



人の気持ちも同じかもしれない



愛しい気持ちが幾重にも重なり、それが愛になっていく




幸世

ずーっと、一緒にいよう




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